在宅勤務(テレワーク)と通勤手当の減額

在宅勤務(テレワーク)と通勤手当の減額

在宅勤務(テレワーク)をして、会社に出勤する日数が減少した従業員について、通勤手当を減額することは可能ですか?

就業規則(賃金規程)に根拠となる規定があれば、通勤手当を減額できます。

通勤手当は、通勤に要する費用を補助するために支給する手当です。通勤手当の支給額は、通勤手段によって、次のどちらかの方法で決定している会社が一般的です。

通常は、就業規則(賃金規程)に、通勤手当の支給額の決定方法やその他の取扱いについて、規定していると思います。

自動車通勤の場合

自動車通勤の場合は、通勤距離に応じて通勤手当の支給額を決定している会社が一般的ですが、次の3パターンに分類されます。

  1. 通勤距離×実出勤日数×単価
  2. 通勤距離×単価
  3. 通勤距離を数段階に区切って、段階ごとに支給額を定める

就業規則(賃金規程)に、「1.通勤距離×実出勤日数×単価」で支給することを定めている場合は、1ヶ月の出勤日数に応じて、通勤手当の支給額が変動します。

実際の出勤日数に応じて、通勤手当の支給額を決定して支払いますので、在宅勤務(テレワーク)をした日については、通勤手当は支給対象外になります。

「2.通勤距離×単価」で支給することを定めている場合は、基本的には、通勤手当の支給額は毎月一定です。

就業規則(賃金規程)に、欠勤した日や出勤しなかった日は、通勤手当を日割り計算するといった規定があれば、その規定に基づいて通勤手当を支払います。

日割り計算するといった規定がない場合は、通勤手当の趣旨に基づいて考えることになります。例えば、1ヶ月の全部が在宅勤務(テレワーク)だったとすると、補助の対象となる通勤に要する費用(ガソリン代)が発生しませんので、その月は通勤手当を支給する必要はないと考えられます。

また、例えば、出勤日数が4分の1に減少したときは、通勤手当も4分の1に減額できると考えられます。要するに、出勤した日数に応じて、日割り計算して支払うことが可能と考えられます。

しかし、「それは納得できない」という従業員が現れるかもしれませんので、就業規則(賃金規程)に、具体的な計算式を記載して、欠勤した日や出勤しなかった日は、通勤手当を日割り計算する旨の規定を設けることが望ましいです。

「3.通勤距離を数段階に区切って、段階ごとに支給額を定める」場合も、基本的には、通勤手当の支給額は毎月一定ですので、考え方は、「2.通勤距離×単価」の場合と同じです。

電車通勤の場合

電車通勤をする従業員には、定期券代の実費を通勤手当として支払っている会社が一般的です。電車通勤については、出勤日数が一定未満になると、定期券代より出勤日数分の交通費の方が低額になります。

そのため、1日や2日在宅勤務(テレワーク)をしたとしても、実際の通勤に要する費用は定期券代のまま変わりませんので、通勤手当を減額することはできません。

出勤日数が一定未満になって、従業員が出勤日数分の交通費を負担して、定期券代より低額になった場合は、その実費を支払えば問題になることは考えにくいです。

しかし、労働契約法(第12条)によって、就業規則(賃金規程)で定めている労働条件を下回る取扱いはできませんので、就業規則(賃金規程)に通勤手当を減額する旨の記載がないと、減額する取扱いは無効として、従業員から満額の支給を請求される可能性があります。

就業規則(賃金規程)に、「定期券代実費(実出勤日数分の交通費の実費とすることがある。)」のように定めておくことが望ましいです。

また、6ヶ月の定期券を購入したものとして、それを6等分した額を1ヶ月の通勤手当として支払っている会社があります。

その場合は、従業員は既に6ヶ月の定期券を購入済みで、実際にその費用を負担していると思いますので、通勤手当を減額したり、不支給とするのは問題があります。

通勤に要する費用を補助するという通勤手当の趣旨に照らし合わせると、実費の支給を原則として、従業員は利益を得ることも不利益を被ることもないという取扱いが合理的です。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。