在宅勤務(テレワーク)と通勤手当
在宅勤務(テレワーク)と通勤手当
在宅勤務(テレワーク)に切り替えて通勤しなかった月は、通勤手当を支給しなくても良いでしょうか?
通勤手当は、通勤に要する費用を補助するために支給する手当です。就業規則(賃金規程)に適切な規定があれば、通勤手当を支給しなくても問題はありません。
通勤手当は、通勤に要する費用を補助するために支給する手当です。通勤手当の支給額は、通勤手段によって、次のどちらかの方法で決定している企業が一般的です。
- 電車やバスで通勤をする従業員には、定期券の実費
- 自動車で通勤をする従業員には、通勤距離に応じて定めた額
それぞれ非課税となる限度額が定められていて、通常はその範囲内で支給しています。
電車やバスで通勤をする場合は、1ヶ月間の定期券の金額が非課税となる限度額と定められています。
自動車で通勤をする場合は、片道の通勤距離に応じて、次のとおり、1ヶ月当たりの限度額が設定されています。
片道の通勤距離 | 1ヶ月当たりの限度額 |
---|---|
2km未満 | 全額課税 |
2km以上10km未満 | 4,200円 |
10km以上15km未満 | 7,100円 |
15km以上25km未満 | 12,900円 |
25km以上35km未満 | 18,700円 |
35km以上45km未満 | 24,400円 |
45km以上55km未満 | 28,000円 |
55km以上 | 31,600円 |
この限度額を通勤手当として支給している会社、又は、「片道の通勤距離(km)×単価(○○円)」の計算方法で支給額を決定している会社が多いです。
そして、通勤をしなかった月は、補助の対象となる通勤に要する費用(ガソリン代の負担)が発生しませんので、通勤手当の趣旨に基づいて考えると、その月は通勤手当を支給する必要がありません。
また、在宅勤務(テレワーク)に切り替えて、1ヶ月の間に数日だけ会社に出勤するような場合も同様に、通勤に要する費用に応じて減額できると考えられます。
自動車通勤をする場合に、例えば、出勤日数が4分の1に減少したときは、通勤手当も4分の1に減額することは可能と考えられます。
就業規則(賃金規程)に、出勤しない日があれば具体的な計算式を記載して通勤手当を減額することを定めていれば、それが契約内容になりますので、通勤手当を減額する取扱いが確実なものになります。
また、就業規則(賃金規程)に、通勤手当を「片道の通勤距離(km)×実出勤日数×単価(○○円)」で算出して支給することを定めている場合は、“実出勤日数”に応じて支給額を決定することになります。
一方、電車通勤をする場合に、出勤日数が一定未満になると、定期券の金額より出勤日数分の交通費の方が低額になります。
従業員が実際に負担した費用も低額になった場合は、その実費を支払えば問題になることは考えにくいです。就業規則(賃金規程)に、通勤手当を減額する場合の取扱いについて定めておくことが望ましいです。
ただし、労働契約法(第12条)によって、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定されています。
つまり、法律上は、会社は就業規則(賃金規程)で定めている労働条件を下回る取扱いをすることが禁止されていますので、就業規則(賃金規程)に通勤手当を減額する旨の記載がないと、減額する取扱いは無効として、従業員から満額の支給を請求される可能性があります。
また、会社によっては、6ヶ月の定期券を購入したものとして、それを6等分した額を1ヶ月の通勤手当として支払っているケースがあります。
その場合は、従業員は既に6ヶ月の定期券を購入済みで、実際にその費用を負担しているはずですので、通勤手当を減額したり、不支給とするのは問題があると思います。
通勤に要する費用を補助するという通勤手当の趣旨に従うと、実費の支給を原則として、従業員は利益を得ることも不利益を被ることもないという取扱いが合理的と思います。
通勤に要する費用が発生していないにもかかわらず、通勤手当を受給して従業員が利益を得ることは合理的ではありませんが、在宅勤務(テレワーク)をすると光熱費や通信費等の費用が掛かります。
減額した通勤手当の全部又は一部を付け替えて、在宅勤務に要する費用に充当するケースもあります。
少数派ですが、小規模零細企業の一部で、通勤距離に関係なく、全員一律の金額(月額1万円等)で通勤手当を支給しているケースがあります。
通勤手当という名称で、通勤に要する費用を補助するために支給していると言っても、実態はそうなっていません。一律の金額で支払っている場合は、名称が通勤手当としても、割増賃金の基礎となる賃金から除外できません。
基本給の一部と判断されますので、在宅勤務(テレワーク)をして出勤しなかったときに、通勤手当を減額したり、不支給とするのは問題があると思います。