あさひ保育園事件

あさひ保育園事件 事件の経緯

幼稚園の園児が減少し、将来も減少が見込まれたため、幼稚園は園児の定員を減らすことを決定しました。

定員の削減について、市の認可を受け、それに伴って幼稚園に支給される措置費が減額されることになりました。

幼稚園は人件費を削減するため、職員の保母2名を解雇することを決定し、解雇日の6日前に通告をして解雇しました。

これに対して、職員(保母)が解雇の無効を主張して、雇用関係の存続の確認と賃金の支払いを求めて、幼稚園を提訴しました。

あさひ保育園事件 判決の概要

幼稚園は園児の減少に対応するため、職員(保母)2名を人員整理すること、人員整理は指名解雇によって実施することを決定した。

そして、幼稚園は職員(保母)に対して、事前に人員整理がやむを得ない事情などを説明して協力を求める努力を一切せず、かつ、希望退職者を募集することもなく、解雇日の6日前になって突如解雇を通告した。

このような解雇は労使間の信義則に反し、解雇権を濫用するもので無効である。

あさひ保育園事件 解説

整理解雇が有効か無効か争われた裁判例です。

この裁判が行われた当時は、労働契約法は制定されていませんでしたが、現在は労働契約法第16条において、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は、解雇は無効になることが規定されています。

整理解雇をする前に、幼稚園は職員に対して、

  1. 人員整理が避けられない事情等について説明しなかったこと
  2. 希望退職者を募集しなかったこと
  3. 解雇日の6日前に解雇を通告したこと

から、解雇権を濫用するものとして、幼稚園が行った解雇は無効と判断しました。

なお、幼稚園ではこの整理解雇を行ってから1年以内に、別の2名の職員が退職し、新たに2名の職員を採用していました。

整理解雇を実施する際に退職者が現れることは予測できなかったとしても、事前に人員整理が避けられない事情等について説明して、有利な条件を付けて希望退職を募集していれば応じていた可能性があります。

結果的に応じなかったとしても、突如解雇された従業員は収入源が絶たれて路頭に迷う恐れがあることから、幼稚園は誠実に対応するべきでした。この裁判で考慮された内容を整理すると、次のようになります。

  1. 職員に対して、人員整理が避けられない事情等について説明して、理解と協力を求める努力をする
  2. 希望退職者を募集する
  3. 解雇の通告(予告)は1ヶ月以上前に行う

整理解雇は経営上の都合により行うものですので、従業員に責任はありません。

そのため、整理解雇は最終手段として、それ以外のあらゆる措置を講じていないと有効とは認められません。解雇を回避するための努力をしないまま、安易に実施した整理解雇は、解雇権を濫用したものとして無効と判断されます。

なお、幼稚園は勤務状況が良くない職員を選定して解雇したと主張していましたが、これに関しては判決では特に触れられていません。解雇される者の選定基準に合理性があるかどうかは、整理解雇を有効と判断した上で行うものと考えられます。