日本ユニカー事件

日本ユニカー事件 事件の経緯

従業員が社外の政治活動に参加して、道路交通法違反、往来妨害罪、業務妨害罪の嫌疑により現行犯として、逮捕、勾留されました。それにより、暦日で91日間、労働日で60日間出勤できませんでした。

会社は就業規則に基づいて、欠勤が長期に及んだことを理由として、従業員を解雇しました。

これに対して従業員が、解雇は無効であると主張して、労働契約上の地位があることの確認及び賃金の支払いを求めて、会社を提訴しました。

日本ユニカー事件 判決の概要

原審の判断は、正当として是認することができる。

東京高裁(原審)

従業員に対する逮捕・勾留について、従業員は結局、有罪(罰金)の判決を受けたことから、逮捕・勾留は正当なものであったと考えられる。したがって、欠勤は、従業員の責に帰すべき事由に当たる。

また、従業員が歴日で91日間継続して欠勤したことについて、会社に対して、これを不問とするべき特段の事情は見当たらない。

本件解雇は、従業員の欠勤を理由とするもので、会社の対外的信用や職場秩序に影響を及ぼしたことを理由とするものではない。

労務の提供は労働契約における従業員の基本的な義務であって、長期に渡ってその義務を履行しないときは、会社の対外的信用や職場秩序に影響が及ばなくても、会社は解雇することができる。

会社が就業規則に解雇事由を定めて、これによって解雇する場合は、その解雇事由となる事実の他に、諸般の事情を総合して判断するのは当然のことである。

本件においては、欠勤日数及びその原因を考慮しただけでも解雇は適法と考えられるが、会社が判断する過程において、従業員の経歴詐称の事実や平素の勤怠状況等を考慮したとしても、これによって解雇が違法となることはない。従業員の平素の勤怠状況として考慮された欠勤、早退、遅刻が従業員の病気によるもので、会社の許可を受けていたとしても同じである。

日本ユニカー事件 解説

従業員が社外で犯罪行為を行って、逮捕、拘留されて、会社に出勤できなくなりました。長期欠勤を理由として、会社が就業規則に基づいて解雇をして、有効か無効か争われた裁判例です。

労働契約とは、従業員が労務を提供して、会社が賃金を支払うという契約です。労務を提供するとは、要するに、会社の指示に従って業務に従事することを言います。

労務の提供は従業員の義務、賃金の支払いは会社の義務です。「欠勤=労務を提供しない」ですので、本来、欠勤は契約違反(債務の不履行)に当たります。

原則的には、相手が契約違反をしたときは、その契約を解約することができます。労働契約においては、解雇できるということです。

しかし、労務の提供は人がすることですので、病気になることがありますし、やむを得ない事情があるかもしれません。個々の事情によっては、解雇が認められない場合があります。

1日や2日の欠勤では、正当な解雇理由とは認められません。一般的な就業規則でも、懲戒解雇の事由として、「正当な理由なく、無断欠勤が引き続き2週間以上に及んだとき」というような規定が設けられています。

正当な理由の有無がポイントで、結局は、労働契約法(第16条)の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」という規定が適用されます。

裁判になったケースでは、従業員が逮捕、拘留されて、暦日で91日間、労働日で60日間欠勤しました。その後、従業員は有罪の判決を受けたことから、逮捕・拘留は正当な行為で、欠勤は従業員の責めに帰すべき事由であると判断されました。

つまり、法律的な責任を負うものとして、従業員は解雇を受け入れなければならない(解雇は有効)という結論になりました。

仮に、無罪の判決が出ていれば、逮捕・拘留は不当な扱いとして、欠勤は従業員の責めに帰すべき事由ではないと判断されたかもしれません。そうなると、従業員に責任を負わせることはできませんので、解雇は無効になります。

また、犯罪行為の嫌疑があった場合に、起訴をして有罪や無罪の判決が出る前に、不起訴処分や起訴猶予処分で終わることもあります。

不起訴処分は、嫌疑なし又は嫌疑不十分と判断して、起訴しないことを言います。有罪になる見込みが乏しいケースですので、個々の事情によりますが、大抵は無罪に近いものと考えられます。

起訴猶予処分は、有罪が見込めるけれども、被害者と示談が成立したり、初犯で深く反省したり、被害が軽微であったり、諸事情を考慮して、起訴を見送ることを言います。この場合は、有罪に近いものと考えられます。

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