1年単位の変形労働時間制の割増賃金の計算方法
1年単位の変形労働時間制の割増賃金の計算方法
- 1年単位の変形労働時間制を導入している場合、割増賃金(時間外勤務手当)の計算方法は適正ですか?
- 原則として、1日8時間又は1週40時間を超えた労働時間が割増賃金の対象となりますが、1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、計算方法が特殊です。
【解説】
労働基準法(第37条)によって、法定労働時間を超えた時間(時間外労働の時間)に対して、割増賃金を支払うことが義務付けられています。
原則的には、1日8時間又は1週40時間を超えて労働した時間が、割増賃金の対象となります。しかし、1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、1年間を平均して1週40時間以内であれば、8時間を超える日又は40時間を超える週があったとしても、時間外労働にはなりません。
変形労働時間制を採用している場合は、割増賃金(時間外労働の時間)の計算方法が特殊で、労働基準法をクリアしようとすると、次のように5段階で計算しないといけません。
- 所定労働時間が8時間超(例:9時間)の日は、所定労働時間(9時間)を超えた時間
- 所定労働時間が8時間以下(例:7時間)の日は、8時間を超えた時間
※7時間超8時間以下の労働時間については、100%分の通常の賃金を支払う必要があります。 - 所定労働時間が40時間超(例:44時間)の週は、所定労働時間(44時間)を超えた時間
- 所定労働時間が40時間以下(例:36時間)の週は、40時間を超えた時間
※36時間超40時間以下の労働時間については、100%分の通常の賃金を支払う必要があります。 - 1年間の法定労働時間の総枠(2,085.71時間)を超えた時間
毎月1.から4.まで計算をして、重複している部分は二重にカウントしないで、合計した時間に対して割増賃金(時間外勤務手当)を支払う義務があります。5.は、変形期間の1年間が終了してから計算します。
毎月従業員ごとに4通りの計算をするのは面倒で、100%分の通常の賃金を支払う部分もありますので、計算ミスが生じやすいです。修正の事務処理が発生すると、更に無用な時間が掛かります。
そのため、従業員ごとに4通りの計算をしている企業は少数で、「各日の所定労働時間を超えた時間」に対して、割増賃金(時間外勤務手当)を支払っている企業が一般的です。
1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、1年間を平均して1週40時間以内になるように、所定労働日と各日の所定労働時間を設定します。なお、1年間の法定労働時間の総枠(合計時間)は、2,085.71時間(=40時間/7日×365日)が最大になります。
1年間の所定労働時間を2,085.71時間未満で設定して、「各日の所定労働時間を超えた時間の合計時間」と「1.から4.までの合計時間」を比較すると、前者の方が大きくなります。つまり、労働基準法の最低基準を上回る取扱いですので、問題はありません。
また、通常は、「1ヶ月の実働時間の合計」-「1ヶ月の所定労働時間の合計」に対して、割増賃金(時間外勤務手当)を支払っていれば問題ありません。この計算方法であれば、事務処理がかなり楽になります。
ただし、1ヶ月の間に、休日労働、休日の振替、遅刻、早退、欠勤等があった場合は、誤差が生じる可能性があります。その場合は、「各日の所定労働時間を超えた時間」を合計して、休日労働等の調整をする必要があります。
そして、1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、「5.1年間の法定労働時間の総枠(2,085.71時間)を超えた時間」を変形期間の1年間が終了してから計算することになっています。
毎月、「1ヶ月の実働時間の合計」-「1ヶ月の所定労働時間の合計」に対して、割増賃金(時間外勤務手当)を支払っていれば、既に支払い済みですので、5.の時間は発生しません。
しかし、変形期間の途中で入退社があって、繁忙期のみ在籍していた従業員については、5.の計算をする必要があります。
例えば、繁忙期の所定労働時間を1週44時間として、2ヶ月だけ所定労働時間どおりの勤務をしたとすると、割増賃金は支払っていないと思います。
在籍していた2ヶ月間を平均して、1週40時間を超えた労働時間に対して、割増賃金を支払う必要があります。ただし、100%分は所定労働時間に対する賃金として、通常の賃金に含まれていますので、25%の割増分のみ支払になります。
通常は、「40時間/7日×変形期間内で在籍した暦日数」を法定労働時間の総枠と考えて、実働時間が総枠を超えたときは、超えた時間に対して割増賃金を支払います。既に支払い済みの部分は重複して支払う必要はありません。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。
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