割増賃金の基礎となる賃金

割増賃金の基礎となる賃金

  • 割増賃金の基礎となる賃金を正しく計算していますか?
  • 労働基準法により、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当が定められていますが、それ以外の手当を除外することはできません。

【解説】

労働基準法(第37条第1項)により、次のように規定されています。

「使用者が、第33条又は第36条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

要するに、時間外労働や休日労働をさせたときは、“通常の労働時間の賃金”を基準にして、その25%や35%の割増率で計算した割増賃金を支払うことが義務付けられています。

そして、労働基準法(第37条第5項)により、「第1項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」ことが定められています。

家族手当、通勤手当、厚生労働省令で定める賃金は、割増賃金の基礎となる賃金から除外できるということです。「厚生労働省令で定める賃金」は、労働基準法施行規則により、次のように規定されています。

「労働基準法第37条第5項の規定によって、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

  1. 別居手当
  2. 子女教育手当
  3. 住宅手当
  4. 臨時に支払われた賃金
  5. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」

したがって、以上を整理すると、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、次の7種類になります。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当(家族と別居している者に支給する手当)
  4. 子女教育手当(子の教育費用を補助するために支給する手当)
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

これらの手当は福利厚生のために、労働の量とは無関係に支給されるものとして、除外することが認められています。

この7種類に当てはまらない手当は全て、割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しないといけません。

当てはまるかどうかは、それぞれの会社における手当の名称は関係なく、実態に基づいて判断されます。よくある間違いは、次のようなケースです。

  1. 扶養家族の数に関係なく支給している「家族手当」
  2. 通勤費用や通勤距離に関係なく支給している「通勤手当」
  3. 家賃や住宅ローンの返済金額(住宅に要する費用)に関係なく支給している「住宅手当」

このような手当は名称と実態が合致していませんので、割増賃金の基礎となる賃金から除外できません。

除外するためには、扶養家族の数、通勤費用や通勤距離、住宅に要する費用、に応じて支給額を変動させる必要があります。

なお、割増賃金は“通常の労働時間の賃金”を基準にして支払いますが、これは所定労働時間に対する賃金のことを言いますので、時間外労働の時間に対する賃金(割増賃金として支払っている手当)は、割増賃金の基礎となる賃金には含みません。

もっと詳しく