フレックスタイム制の割増賃金の計算方法

  • フレックスタイム制を導入している場合に、割増賃金(時間外勤務手当)の計算を適正に行っていますか?
  • フレックスタイム制を導入している場合は、時間外労働の時間の計算方法が、労働基準法上の原則的な計算方法と異なります。

【解説】

フレックスタイム制とは、出退勤の時刻を従業員が自由に決定できる制度です。

そのため、フレックスタイム制を採用する場合は、「1日8時間又は1週40時間を超えた時間に対して、割増賃金を支払う」という労働基準法の原則的な考え方が適用されません。

つまり、割増賃金の支給対象となる時間外労働の時間は、1日単位や1週間単位では発生しません。

フレックスタイム制の清算期間(単位となる期間)を1ヶ月とした場合、清算期間の総労働時間(所定労働時間の合計)を超えた時間が、所定外の労働時間になります。

そして、清算期間の総労働時間(所定労働時間の合計)は、1週40時間を上限として、清算期間(1ヶ月)の暦日数に応じて、次の範囲内とする必要があります。「40時間/7日×暦日数」で計算します。

清算期間の暦日数総労働時間の上限
31日177.1時間
30日171.4時間
29日165.7時間
28日160.0時間

例えば、清算期間の暦日数が31日の月で、1日の所定労働時間が7.5時間、所定労働日数が23日とすると、その月の総労働時間(所定労働時間の合計)は172.5時間になります。

労働基準法上の最低基準としては、法定労働時間(1週40時間相当)の177.1時間を超えた時間に対して、割増賃金(125%の時間外勤務手当)を支払うことが義務付けられます。

また、「177.1時間−172.5時間」の4.6時間分(法定労働時間内で所定労働時間を超えた時間)については、就業規則や雇用契約書の内容に基づいて、125%で支払うか、100%で支払うか、決まります。

就業規則や雇用契約書で「所定労働時間を超えた時間に対して、125%の時間外勤務手当を支払う」と記載している場合は、そのように支払います。

一方、「法定労働時間を超えた時間に対して、125%の時間外勤務手当を支払う」「所定労働時間を超えた時間に対して、100%の時間外勤務手当を支払う」と記載している場合は、4.6時間分については、通常の100%の賃金を支払うことになります。

また、フレックスタイム制を導入している場合であっても、深夜の時間帯(22時から翌日5時までの間)に勤務をしたときは、25%の深夜勤務手当を支払う必要があります。

更に、法定休日に勤務をしたときは、135%の休日勤務手当を支払う必要があります。この法定休日労働の時間については、重複して時間外勤務手当を支払わないように、時間外労働の時間から控除します。

したがって、フレックスタイム制を採用している場合であっても、1ヶ月の実働時間の合計を把握するだけでは不十分ですので、各日ごとの実働時間を適正に把握しないといけません。

完全週休二日制の場合

暦日が31日の月は177.1時間が総労働時間(所定労働時間の合計)の上限になると言いましたが、完全週休二日制の会社に限って、例外的な取扱いが認められています。

例えば、1日の所定労働時間が8時間、賃金計算締切日が毎月末日、土曜日と日曜日が休日の完全週休二日制の会社で、仮に、7月1日が月曜日だったとします。

この場合、7月の所定労働日数は23日ですので、総労働時間(所定労働時間の合計)は184時間(23日×8時間)になります。

177.1時間の上限を超えますが、完全週休二日制ですので、各週の所定労働時間は40時間です。これまでは一切残業をしなかったとしても、177.1時間を超えた時間に対して、割増賃金を支払うことが義務付けられていました。

曜日の巡りによって想定外の時間外労働が発生していましたが、法律が改正されて、労使協定で「清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の限度とすることを定めた場合は、そのように処理できるようになります。

上の例で言うと、23日×8時間=184時間が総労働時間の上限になりますので、残業をしなければ、時間外労働の時間(割増賃金の支払い義務)は発生しません。当然と言えば当然のことです。

ただし、仮に、7月1日が土曜日だったとすると、21日×8時間=168時間が総労働時間(所定労働時間の合計)の上限になりますので、注意が必要です。労使協定を締結して例外を適用したとしても、年間を通して見ると総労働時間の合計は、通常の計算方法の場合と同じになります。

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