労働時間の変更と雇用契約書の再交付
労働時間の変更と雇用契約書の再交付
シフト制で勤務をしているパートタイマーの労働時間を変更しようと思っていますが、雇用契約書は作成し直した方が良いでしょうか?
労使間の思い違いを防止するため、及び、雇用保険や社会保険の加入の有無を明確にするために、雇用契約書は作成し直した方が良いです。
労働契約法(第8条)によって、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と規定されています。
労働条件(賃金や労働時間等)を変更する場合は、労使間で合意して行うことが示されています。したがって、会社がパートタイマーの労働条件を変更しようとする場合は、本人から同意を得る必要があります。本人から同意が得られなければ、会社が一方的に労働条件を変更することはできません。
また、労働基準法(第15条)によって、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。
従業員を採用するときは、会社は雇用契約書や労働条件通知書を作成して、賃金や労働時間等の労働条件について、明示することが義務付けられています。
この労働条件の明示(書面の交付)は、採用を決定して労働契約を締結する際に義務付けられるもので、採用した後に労働条件を変更する際は義務付けられていません。
賃金を変更したときは、本人は給与明細で変更内容を確認できます。普通は昇給のみですので、問題が生じることは考えにくいです。賃金通知書を交付して、変更後の賃金額を明示している会社もあります。
しかし、シフト制で勤務をしている従業員の労働時間を変更したときは、労働条件(労働契約の内容)を変更したという記録が残りにくいので、雇用契約書を作成し直すことが望ましいです。雇用契約書という形にしておけば、労働時間の変更について、本人が同意したという証拠になります。
会社の中には、「採用時に、シフト制で勤務することは決めていたけれども、具体的な労働時間や労働日(休日)は決めないで採用した」というケースがあります。しかし、具体的に決めていないと、会社及びパートタイマーの双方が都合の良いように考えて、トラブルになりやすいです。
そのような場合も雇用契約書を作成して、次のように、具体的な所定労働時間及び所定労働日数を定めて、改めて労使間で合意をすることが望ましいです。
- 一定期間(1週間や1ヶ月など)の所定労働時間及び所定労働日数の目安
- 一定期間(1週間や1ヶ月など)の所定労働時間及び所定労働日数の下限・上限
また、雇用保険については、パートタイマーやアルバイト等の雇用形態は関係なく、1週間の所定労働時間が20時間以上の者は、加入義務があります。原則的には、実働時間ではなく、定時の所定労働時間で判断されます。1週間の所定労働時間が20時間未満の者は、雇用保険に加入できません。
社会保険(厚生年金保険と健康保険)については、1週間の所定労働時間が30時間以上かどうかが目安になります。ただし、特定適用事業所に該当する場合は、1週間の所定労働時間が20時間以上かどうかが加入義務の判断基準となります。
雇用保険や社会保険の加入義務の有無を明確にするために、書面(雇用契約書や労働条件通知書)を交付して、所定労働時間を明確にするべきです。書面にすることによって、変更した日(雇用保険や社会保険の加入日)が明らかになります。
なお、所定労働時間を変更することによって、雇用保険や社会保険の加入基準を満たしているかどうかが切り替わる場合は、本人に説明をする必要があります。
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