深夜残業によるタクシー代の費用負担

深夜残業によるタクシー代の費用負担

上司が部下に深夜に及ぶ残業を指示して、最終電車がなくなったため、部下はタクシーで帰宅しました。その場合のタクシー代は、会社負担か本人負担かどちらでしょうか?

法律的には、会社がタクシー代を負担する義務はありませんが、本人負担とすると労使関係が悪化することは避けられません。

従業員がタクシー代を請求するためには、その根拠が必要です。しかし、労働基準法等の法律には、そのようなケースに当てはまる規定は設けられていません。

通勤に要する費用を補助するために、通勤手当を支払っている会社が一般的ですが、法律上は、通勤に要する費用を会社が負担することは義務付けられていません。

会社は、契約内容として成立している就業規則(賃金規程)に基づいて、通勤手当を支給することは義務付けられますが、就業規則(賃金規程)に、タクシー代を支給するような規定は普通は設けられていません。

つまり、従業員が会社に対して、タクシー代を請求できる根拠がないということです。

しかし、従業員としては、「上司(会社)が深夜残業を指示したことが原因で、タクシー代が掛かったから、会社が負担するべきだ」と考えるのが自然です。

その場合に、「支払わなければならない根拠がないから、会社はタクシー代を支払わない」と説明して、従業員の請求を拒否すると、従業員としては、残業手当と相殺することになって、「何のために働いているのか分からない」と、会社に対して大きな不満を持つことになります。

フレックスタイム制を適用する場合など、従業員自身の判断で深夜残業をして最終電車がなくなった場合は自己責任ですので、タクシー代は本人負担とすることができます。

また、自然災害が原因で電車が運休した場合に、タクシーで帰宅することがありますが、会社に責任はありませんので、従業員の負担としても比較的理解は得られやすいです。

しかし、上司(会社)が深夜残業を指示して、最終電車がなくなった場合は、原因が会社にあることは明らかですので、本人負担とすることは理解が得られないと思います。

法律的に会社に負担する義務がないとしても、労使関係の維持・向上を考えると、会社が負担するべきです。実際に、そのような場合に、会社がタクシー代を負担しているケースは少なくありません。

また、そもそも過重労働は避けるべきですので、深夜残業をなくす方法を早急に検討するべきです。最終電車に間に合うように、始業時刻前の早出残業をすることが考えられますが、過重労働の解決にはなりません。