帰宅困難者に対する費用負担

帰宅困難者に対する費用負担

台風、地震、大雪等の影響で電車が運休して、従業員が電車で帰宅できなくなった場合に、タクシーで帰宅したり、ホテルに宿泊したりして、生じた費用については、会社が負担しないといけませんか?

本人の意思で利用して生じたタクシー代や宿泊費は、会社が負担する義務はありません。

就業規則(賃金規程)に基づいて、通勤に要する費用を補助するために、通勤手当として、電車通勤をしている従業員については、定期券代に相当する額を支払っている会社が一般的と思います。

しかし、台風、地震、大雪等の自然災害によって、電車が運休する場合があります。その他にも、事故や故障、ストライキ等が原因で、電車が運休することもあります。

勤務時間中に急に電車の運休が発表されると、電車通勤をしている従業員は、帰宅が困難になります。その場合の対応策としては、次のような方法が考えられます。

どの方法を選択するかは、従業員が住んでいる地域や環境によって変わりますが、生じた費用については、どの方法でも本人負担が原則です。会社が、就業規則で定めている以上の負担を義務付けられることはありません。

意思決定と自己責任はセットですので、本人の意思決定によって生じた費用については、自己負担(自己責任)になります。そのため、会社から従業員に対して、タクシーで帰宅するよう指示した場合は、業務命令として、費用負担を求められる可能性が高いです。

また、会社には安全配慮義務がありますが、通勤時間は会社の指揮命令下にありませんので、原則的には、通勤に伴う危険(交通事故等)については、安全配慮義務の範囲外と考えられています。

したがって、従業員が安全に帰宅できるように、会社が費用負担をすることは求められません。従業員が自身の責任で危険を回避して、負担を引き受けることになっています。

しかし、会社としては、「気の毒だから補助してあげたい」と思うかもしれません。仮に、会社が費用を負担するとしても、次のような問題が生じます。

また、自己負担と思ってタクシーやホテルを利用しなかった従業員が、後になって支給されることを知らされると、不満を持たれることがあります。会社が費用を負担したにもかかわらず、従業員から不満を持たれるのであれば、負担しない方が良いと思います。

若しくは、事後対応で決定するのではなく、次の例のように、事前に支給する基準を従業員に周知しておけば、不公平感を抑えられます。

例:所属長の許可及び領収証の提出を条件として、その費用の半額(上限額は3,000円)を支給する。送迎に要したガソリン代は支給しない。