3回の遅刻で1日の年次有給休暇を消化

3回の遅刻で1日の年次有給休暇を消化

遅刻をしても賃金を減額しないで、遅刻が3回に達したときに、年次有給休暇を1日分消化するという処理は、問題がありますか?

従業員が同意したとしても、そのような処理は問題があります。

年次有給休暇は、従業員の心身の疲労を回復したり、ゆとりのある生活を保障することを目的とした制度です。心身の疲労を回復するという趣旨から、原則的には、年次有給休暇は1日単位で取得することになっていて、半日単位で取得する方法も認められています。

また、労働基準法が改正されて、時間単位で取得する方法も可能になりました。ただし、時間単位で年次有給休暇を取得する場合は、あらかじめ従業員の過半数代表者と労使協定を締結することが条件になっていて、時間単位で取得できるのは、1年につき5日以内に制限されています。

そして、労使協定を締結している会社で、従業員が前日までに時間単位で年次有給休暇の取得を会社に申し出たときは、そのように利用できます。

本来、年次有給休暇の取得は前日までに申し出ることが条件になっていますが、遅刻をしたときに、当日以降に従業員が申し出て、会社が許可をすれば、年次有給休暇を消化して充当することも可能です。

しかし、例えば、1時間の遅刻を3回したときに、ペナルティの意味も込めて、1日分(8時間分)の年次有給休暇を消化したものとして処理をすることはできません。

年次有給休暇とは、出勤日の勤務を免除して賃金を支払うという制度です。実際に勤務をしているのであれば、勤務を免除するという年次有給休暇の定義から外れます。

従業員から、「遅刻した3時間分の賃金を減額されるなら、余っている年次有給休暇を消化してもらった方が良い」と言われたとしても、労働基準法上は違法(年次有給休暇の消化は無効)になります。

未消化の年次有給休暇の買取りと同じで、従業員と会社の双方が望んでいたとしても、年次有給休暇の趣旨に反しますので、労働基準法上は認められません。

労働基準法が改正されて、1年につき5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられるようになりましたが、5日分を買い取って、年次有給休暇を与えたものとみなすことはできません。