遅刻と時間単位の年次有給休暇の相殺
遅刻と時間単位の年次有給休暇の相殺
従業員が遅刻をしたときに、時間単位で年次有給休暇を消化することはできますか?
労使協定を締結して、本人が同意すれば、時間単位で年次有給休暇を消化できますが、望ましい対応ではないと思います。
これまで年次有給休暇は、1日単位の取得又は半日単位の取得しか認められていませんでしたが、労働基準法が改正されて、従業員の過半数代表者と労使協定を締結すれば、時間単位で取得できるようになりました。
なお、年次有給休暇は心身の疲労回復を目的とする制度ですので、1日単位の取得を原則として、時間単位の取得は、1年につき5日分が上限とされています。
そして、年次有給休暇は、従業員が事前に取得日を指定して、会社に請求して利用するものです。会社が一方的に年次有給休暇を取得させることはできません。
また、年次有給休暇の申出は前日までに行う必要がありますが、当日以降に従業員が申し出て、会社が認めた場合は、当日以降の申出であっても取得できます。
したがって、遅刻した時間分の年次有給休暇の取得について、従業員が申し出て、会社が認めたときは、時間単位で年次有給休暇を取得できます。会社から時間単位の年次有給休暇の取得を提案して、従業員が同意した場合も同じです。
会社としては、「1年に5日以上の年次有給休暇を取得させないといけないし、遅刻した時間分の賃金を減額・控除する計算が面倒だから」といって、賃金を控除しないで、時間単位で年次有給休暇を消化したいと考えるかもしれません。
しかし、会社が時間単位の取得を認めると、同時に遅刻も認めることになります。そうなると、会社は遅刻をした従業員に対して、指導や懲戒処分ができません。また、一部の従業員が遅刻を繰り返して、業務に支障が生じることも考えられます。
したがって、遅刻を繰り返す従業員が現れる心配がない職場、遅刻が繰り返されても業務に支障が生じない職場であれば認めても良いかもしれませんが、遅刻されると困る職場では認めない方が良いと思います。
また、時間単位の年次有給休暇の取得は、従業員の過半数代表者と労使協定を締結していることが条件になっていますので、労使協定を締結していない会社は、時間単位で取得することはできません。
従業員が遅刻をして、当日以降に時間単位の年次有給休暇の取得を申し出た場合は、以上のとおりですが、就業規則や労使協定に基づいて、前日までに従業員が年次有給休暇の取得を申し出た場合は、会社は取得を拒否することはできません。
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