休職・長期欠勤時の社会保険料の徴収

休職・長期欠勤時の社会保険料の徴収

従業員が私傷病で休職することになりましたが、無給のため、賃金から厚生年金保険料と健康保険料を控除・徴収できません。どうすれば良いですか?

従業員負担分の社会保険(厚生年金保険と健康保険)の保険料は、毎月、会社に振り込んでもらう方法が良いと思います。

社会保険(厚生年金保険と健康保険)の保険料は、会社と従業員がそれぞれ2分の1を負担することになっています。

当月分の社会保険料は、翌月末日が納付期限になっていて、翌月に支払う賃金から、本人負担分の社会保険料を控除していると思います。

しかし、従業員が休職したり、長期欠勤をしたりして、賃金が支払われないと、会社は従業員負担分の社会保険料を控除できません。

私傷病の場合は、無給であったとしても、社会保険料の負担は免除されませんので、会社は何らかの方法で、従業員負担分の社会保険料を徴収する必要があります。

ところで、社会保険料と同様に、住民税も従業員に支払う賃金から控除して、市町村に納付していると思います。この方法を「特別徴収」と言いますが、無給の場合は、賃金から住民税を控除できません。

住民税を納付する義務は本人にありますので、市町村に申請をすれば、会社が控除・納付する方法(特別徴収)から、本人が自ら納付する方法(普通徴収)に切り替えることができます。

しかし、厚生年金保険法及び健康保険法によって、保険料を納付する義務は、会社にあることが定められています。本人が直接、社会保険料を納付する方法に切り替えることはできません。

本人負担分の社会保険料を徴収する方法としては、次のような方法が考えられます。

  1. 毎月、決まった日に振り込んでもらう
  2. 会社が立て替えて、従業員が復帰した後に返済してもらう
  3. 本人負担分の社会保険料と同額の賃金を支給して、徴収する
  4. 数ヶ月分の社会保険料を事前に会社に預けてもらう

2.の復帰後に返済してもらう方法は、長期間になると返済が大変です。本人負担分の健康保険料は賃金の約5%、厚生年金保険料は賃金の約10%で、介護保険の保険料もありますので、仮に、賃金が30万円とすると、1ヶ月につき約4.5万円、4ヶ月で約18万円になります。

従業員にとっては治療費等が必要な状態ですので、余計に返済が厳しいと思います。また、復帰しないで退職する場合は、返済に応じてもらえないで、トラブルになることがよくあります。社会保険料の納付義務は会社にありますので、返済してもらえないとしても、会社が納付しないといけません。2.の方法は止めた方が良いです。

3.の方法は、本人負担分の社会保険料を会社が代わって負担する形になります。従業員が健康保険から傷病手当金を受給している場合は、賃金とみなされて、その分だけ傷病手当金が減額されます。結果的に、従業員の手取りは同じですが、会社の負担が増えます。

4.の方法は、予定していた時期に復帰すれば問題はありませんが、復帰が遅れると、再度、社会保険料の徴収方法について、本人と話し合う必要があります。話合いがまとまらないと、問題になります。

総合的に考えると、1.の方法が良いと思います。なお、雇用保険の保険料については、その都度、支払った賃金額が基準になりますので、無給の場合は、雇用保険の保険料は発生しません。