残業の拒否
残業の拒否
「残業はしたくない」と言って残業を拒否する従業員がいるのですが、会社は残業を強制できないのでしょうか?
就業規則に、「時間外労働や休日労働を命じることがある」といった内容を記載していれば、これを根拠にして、会社は残業(時間外労働や休日労働)を命じて、従業員に強制することができます。
就業規則に記載している内容は、会社と従業員の契約事項として成立していますので、従業員は(会社も)就業規則の内容に従う義務があります。
従業員が就業規則の具体的な内容を知らなかったり、「同意したつもりはない」と主張したとしても、原則的に、従業員は入社時にその会社の就業規則の内容に同意したものとみなされます。
したがって、就業規則に、「時間外労働や休日労働を命じることがある」といった内容を記載している場合は、これを根拠にして、会社は残業(時間外労働や休日労働)を命じて、従業員に強制することができます。
しかし、就業規則にそのように記載していたとしても、採用時に個別に残業(時間外労働や休日労働)がないことを約束していた場合は、個別の約束が優先されますので、会社は残業を強制できません。その都度、本人の同意が必要になります。
また、就業規則に残業を命じることがあるといった記載がない場合は、残業を命じる根拠がありませんので、この場合も残業は強制できません。
就業規則にそのような記載がなかったり、従業員数が10人未満の会社で就業規則を作成していないとしても、労働基準法によって、採用時に雇用契約書や労働条件通知書を交付して、個別に労働条件を明示することが義務付けられています。
明示が義務付けられている労働条件の1つとして、時間外労働や休日労働の有無が定められています。雇用契約書等に、時間外労働や休日労働があると記載していれば、会社は時間外労働や休日労働を強制できます。
そして、会社が時間外労働や休日労働を強制できる状態で、従業員が会社の残業命令を拒否した場合は、業務命令違反として懲戒処分(始末書の提出など)の対象になります。
ただし、体調不良や家族の介護など、残業ができない特別な事情がある場合は、その事情を考慮することとされています。したがって、従業員が残業を拒否する場合は、その理由を確認する必要があります。
その都度、残業ができない理由(事情)と業務上の残業の必要性を比較して、どちらを優先するべきかによって残業を命じられるかどうかが決まります。