二以上事業所勤務届の未提出

二以上事業所勤務届の未提出

従業員が兼業をして、当社と兼業先の両方で社会保険の加入要件を満たしている場合に、「二以上事業所勤務届」を提出しなかったとすると、何か不都合が生じますか?

従業員が受給できる傷病手当金や出産手当金の支給額が少なくなったり、将来の年金額に正しく反映されなかったりします。

兼業をしているパートタイマー等が2ヶ所以上の会社で社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入要件を満たしている場合は、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構(事務センター又は年金事務所)に提出することになっています。

そして、両方の会社から支払われた賃金の合計額を基準に社会保険料(標準報酬月額)を算出して、賃金に応じて社会保険料を案分して、それぞれの会社で社会保険料を納付することになります。

それぞれの会社で社会保険の加入要件を満たしている場合は、それぞれの会社で資格取得届を提出しないといけません。提出を怠っていることが発覚すると、さかのぼって社会保険料を徴収されます。

また、両方の会社で適正に資格取得届を提出していても、「二以上事業所勤務届」が未提出のままになっていると、不都合が生じます。

健康保険被保険者証(健康保険証)があれば、3割負担で医師の診察や治療を受けられますので、その点で不都合はありません。しかし、健康保険には、傷病手当金や出産手当金の制度があります。

私傷病のため4日以上休業したときは、健康保険から傷病手当金が支給されます。支給額は1日につき、標準報酬日額の約3分の2です。産前産後休業(産休)を取得した場合に支給される出産手当金も同じ額です。

「二以上事業所勤務届」を正しく提出している場合は、仮に、A社の賃金月額が11万円、B社の賃金月額が15万円で、標準報酬月額が合計26万円だったとすると、1ヶ月休業したときは、約17.3万円が支給されます。

しかし、「二以上事業所勤務届」を提出していないと、それぞれ別人とみなされますので、片方の会社のみが対象となって、賃金月額(標準報酬月額)が15万円として、1ヶ月休業したときは、約10万円しか支給されません。

該当する場合は、「二以上事業所勤務届」を提出するようにしてください。

ただし、兼業していることを会社に申告しないと未提出のままになりますので、従業員(パートタイマー等)に対して、兼業をする場合、兼業先で社会保険に加入する場合は、会社に申し出るよう周知する必要があります。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。