社会保険の同日得喪

社会保険の同日得喪

社会保険の同日得喪というのは、どういう制度でしょうか?

社会保険(健康保険と厚生年金保険)について、定年後に再雇用する従業員の退職手続き(資格喪失届)と入社手続き(資格取得届)を同じ日に行うものです。

高年齢者雇用安定法によって、定年年齢は60歳以上として、希望者については、65歳まで雇用を継続することが義務付けられています。そのための方法として、次の3つの措置のいずれかを講じることとされています。

  1. 定年年齢の引上げ
  2. 継続雇用制度(再雇用制度)
  3. 定年制の廃止

2.の継続雇用制度とは、一旦、定年退職をして、改めて再雇用する制度です。正社員から嘱託従業員に切り替えて、賃金や労働時間等の労働条件を設定し直します。

雇用形態の切替えに伴って、賃金を減額する会社が多いですが、社会保険(厚生年金保険と健康保険)の保険料は、減額前の賃金(標準報酬月額)が基準になります。

そして、賃金を減額して、標準報酬月額が2等級以上変動したときは、年金事務所に月額変更届を提出して、変動があった月の4ヶ月後に標準報酬月額(社会保険料)が改定されます。

そのため、再雇用後の3ヶ月間は、実際の賃金と比べて、社会保険料(標準報酬月額)が高額になります。

これが原則的な取扱いですが、60歳以上の従業員を引き続き再雇用して、賃金を引き下げるときは、退職して同時に入社したものとみなす取扱いが認められています。同日に「資格取得届」と「資格喪失届」の処理を行うことから、同日得喪と呼ばれています。

同日得喪によって、3ヶ月を待たないで、再雇用した月から実際の賃金に応じた標準報酬月額に引き下げることができます。つまり、通常の場合より、3ヶ月間の社会保険料(健康保険と厚生年金保険の保険料)が安くなるというメリットがあります。

なお、同日得喪は例外的に認められている手続きで、「資格喪失届」と「資格取得届」、(被扶養者がいる場合は)「異動届」の他に、就業規則(退職したことが分かる書類)や雇用契約書(再雇用されたことが分かる書類)等の添付が求められます。

同日得喪の手続きは、従来は、定年退職をする場合に限られていましたが、定年以降に再雇用する場合も(60歳以降のどの時点でも)、同日得喪の手続きが可能になりました。

標準報酬月額の変動幅は、1等級でも可能です。標準報酬月額に変動がなければ、手続きをする必要はありません。

なお、健康保険の傷病手当金を受給している場合は、同日得喪の手続きをすると、標準報酬月額に連動している傷病手当金の額が引き下げられますので、注意してください。また、将来支給される年金額についても、引き下げられた標準報酬月額で計算することになります。

この取扱いは正社員に限定されませんので、社会保険(厚生年金保険と健康保険)に加入しているパートタイマーやアルバイト等も対象となります。