定年後の再雇用と雇用契約書

定年後の再雇用と雇用契約書

来月60歳の定年に達して、嘱託として再雇用する従業員がいますが、何か手続きは必要ですか?

まずは、雇用契約書を作成する必要があります。

高年齢者雇用安定法によって、次のいずれかの措置を講じて、65歳まで雇用を確保することが義務付けられています。

  1. 定年の引上げ
  2. 継続雇用制度(希望者を再雇用する制度)
  3. 定年の廃止

1.は定年が65歳以上、3.は定年がありませんので、従業員が60歳になったとしても、労働条件が変更することはありません。59歳になったときと同じですので、基本的には手続きは不要です。

2.は60歳(から64歳まで)の定年はそのままですので、一旦、定年退職をして、希望する者については、改めて再雇用する形になります。

「再雇用=労働契約の締結」ですので、労働基準法の労働条件の明示に関する次の規定(第15条)が適用されます。

従業員を採用するときは、労働条件を明示することが義務付けられていて、賃金や労働時間等の重要な労働条件については、書面(雇用契約書や労働条件通知書)を作成して、従業員に交付する必要があります。

2.継続雇用制度(希望者を再雇用する制度)を定めている会社では、定年を機会に労働条件を見直すことを前提としています。

再雇用に伴って、賃金や労働時間、業務内容等の労働条件が変わりますので、労働条件の明示は、労使間の思い違いから生じるトラブルを防止するために、実務上も重要な手続きです。

なお、労働条件を明示するタイミングは、「労働契約の締結に際し」となっていますので、労働条件の内容について、労使間で合意したときです。したがって、再雇用の2ヶ月前に合意したときは、その後、できるだけ早い時期に交付する必要があります。

また、労働日数を減らしたり、労働時間を短くしたりして、社会保険(厚生年金保険と健康保険)や雇用保険の加入基準を満たさない場合は、再雇用後にこれらの資格喪失の手続きを行います。退職して資格を喪失する場合と同様に、退職日前(再雇用前)に届け出ることはできません。

再雇用に伴って、社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入基準を満たしたまま、標準報酬月額が変動する場合は、「同日得喪」の手続きを行います。社会保険の「同日得喪」については、別のページで解説しています。

退職金の制度がある会社においては、就業規則(退職金規程)に基づいて、処理をすることになりますが、定年退職を退職金の支給事由と定めて、退職金を支払うケースが多いです。