有期労働契約の不更新条項
有期労働契約の不更新条項
最初に1年の期間を定めて雇用しましたが、その後は契約の更新の手続きをしないまま3年が経過しました。売上げが厳しくなったので、雇用契約を打ち切りたいと思っていますが、可能でしょうか?
本人と話し合って合意できれば、雇用契約を打ち切ることができますが、本人が応じなければ、雇止め(解雇)をしても無効と判断される可能性が高いと思います。
労働基準法(第15条)によって、従業員を採用するときは、書面(雇用契約書や労働条件通知書)を交付して、労働条件を明示することが義務付けられています。
また、厚生労働省により、「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」が策定されていて、期間を定めて雇用する場合は、「更新の有無」及び「更新する可能性がある場合は判断の基準」を明示することが義務付けられています。
そして、「更新の有無」については、次の3通りの方法が考えられます。
- 原則、更新する(特別な事情がある場合は更新しない)
- 原則、更新しない(特別な事情がある場合は更新する)
- 更新しない
「更新しない」は、最初に設定した契約期間で雇用を終了することが明らかですので、労使間で思い違いが生じることはありません。
「原則、更新する」「原則、更新しない」とする場合は、それぞれ具体的な判断の基準を明示します。従業員が予測できる程度に具体的に記載できれば、労使間のトラブルを防止できます。厚生労働省が公開しているガイドラインでは、次のように例示されています。
- 契約期間満了時の業務量により判断する
- 労働者の勤務成績、態度により判断する
- 労働者の能力により判断する
- 会社の経営状況により判断する
- 従事している業務の進捗状況により判断する
従業員がこのような基準を満たしているかどうかを予測することは難しいので、更新しない場合は、実務上は本人から理解が得られるように資料を提示して説明をすることが重要です。
トラブルに発展する典型的なケースは、従業員が「雇用契約は継続される」と期待して、会社が「雇用契約を打ち切りたい」と考えている場合です。上司や役員は、更新を期待させるような発言をしないよう注意する必要があります。
また、更新の有無や更新の判断基準等の労働条件については、更新する都度(労働契約を締結する都度)、明示しないといけません。
自動更新をしていたり、明示義務を怠っていたりすると、「雇用契約は継続される」と従業員が期待するのは当然のことです。法律的にも、その期待は保護されるべきとして、無期雇用に転換したとみなされる可能性が高くなります。
そうなると、契約期間の満了による雇止めは認められません。解雇とみなされて、正当な解雇理由が必要になります。
したがって、個々の状況によりますが、契約内容(労働条件)が曖昧になっている場合は、それを明確にするために、改めて雇用契約書を交付した方が良いと思います。
その際に、雇用契約書には、「本契約をもって終了し、契約は更新しない」と記載して、本人から同意(署名)が得られれば、その契約期間で終了することになりますので、労使紛争に発展する可能性を抑えられます。
ただし、会社が強制したり、騙したりして、署名をもらっても意味がありません。例えば、「署名をしなければ今すぐ雇用契約を打ち切る」といった説明をしていると、強迫されたと受け取られて、同意(署名)が無効になる可能性が高いです。
普通に考えると、従業員にメリットがないと同意はしないと思います。会社から一時金の支給や年次有給休暇の買取りといった優遇措置を提案することが望ましいです。従業員がそれを受け入れれば、自由な意思で同意をしたという主張が通りやすいです。
なお、労働基準法(施行規則)が改正されて、有期労働契約を締結する場合は、更新する場合の上限の有無、上限がある場合は通算契約期間又は更新回数の上限など、労働条件の明示事項が追加されました。
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