有期労働契約の不更新条項

有期労働契約の不更新条項

最初に1年の期間を定めて雇用したのですが、その後は自動的に更新をして3年が経過しました。会社の売上げが厳しいため雇用契約を打ち切りたいのですが、可能でしょうか?

本人と話し合って合意できれば、合意に基づいて雇用契約を打ち切ることができますが、本人が応じなければ、急に雇止め(解雇)をしても無効と判断される可能性が高いです。

労働基準法によって、従業員を採用するときは、雇用契約書や労働条件通知書等の書面で、労働条件を明示することが義務付けられています。

期間を定めて雇用する場合は、明示が義務付けられている労働条件として、「雇用契約の更新の有無」と「更新する可能性がある場合はその基準」に関する事項が挙げられています。

雇用契約の更新の有無については、次の3通りの方法が考えられます。

  1. 原則、更新する(特別な事情がある場合は更新しない)
  2. 原則、更新しない(特別な事情がある場合は更新する)
  3. 更新しない

「更新しない」は、最初に設定した契約期間で雇用を終了することが明らかですので、労使間で思い違いが生じることはありません。

「原則、更新する」「原則、更新しない」とする場合は、それぞれ具体的な基準を明示しないといけません。従業員が予測できる程度に具体的に記載できれば、労使間の思い違いから生じるトラブルを防止できて良いのですが、厚生労働省が公開しているガイドラインでは、

と例示されています。従業員が基準を満たしているかどうかを予測することは困難ですので、更新しない場合は、実務上は本人から理解が得られるように資料を提示して説明をすることが重要です。

トラブルになる典型的なケースは、従業員は「雇用が継続される」と期待して、会社は「契約を打ち切りたい」と考えている場合です。採用時やその後も、上司等は更新を期待させるような発言をしないよう注意する必要があります。

また、更新の有無や更新の判断基準等の労働条件については、更新する都度(労働契約を締結する都度)、明示しないといけません。

自動更新していたり、自動更新かどうかも曖昧で、明示義務を怠っていると、無期雇用に転換されたとみなされる可能性が高くなります。そうなると、契約期間の満了による雇止めは認められません。解雇とみなされて、正当な解雇理由が必要になります。

したがって、個々の状況によりますが、契約内容(労働条件)が曖昧になっている場合は、整理をするために、雇用契約を締結し直した方が良いと思います。

その際に、雇用契約書には、「本契約をもって終了し、契約は更新しない」と記載して、本人から同意(署名)が得られれば、その契約期間で終了することになりますので、労使紛争に発展する可能性を抑えられます。

ただし、会社が強制したり、騙したりして、署名をもらっても無効になります。例えば、「署名をしなければ即時に雇用契約を打ち切る」といった説明をしていると、強迫されたと受け取られて、同意(署名)が無効になる恐れがあります。

普通に考えると、従業員にメリットがないと同意はしないでしょう。会社から一時金の支給、年次有給休暇の優先的な消化や買取り等の優遇措置を提案することが望ましいです。従業員がそれを受け入れれば、自由な意思で同意をしたという主張が通りやすくなります。