退職日の変更

退職日の変更

問題のあった従業員が来月末日付で退職する旨の退職届を提出しましたが、会社としては今月末日で退職してもらいたいと考えています。可能でしょうか?

退職日の変更について、本人が同意すれば可能です。同意がなければ、会社が変更することはできません。

民法によって、期間を定めないで雇用している従業員は、2週間前に申し入れをすれば、いつでも退職できることが定められています。会社が退職の申し入れを拒否することはできません。

また、就業規則によって、自己都合で退職する場合は、1ヶ月以上前に退職届を提出することを義務付けている会社が多いです。

そのため、来月末日付で退職するという退職届は、このようなルールを守っていることになります。

自己都合退職は、退職日の指定を含めて、本人の意思で行うものです。会社から説得をして、本人が同意すれば、退職届を提出し直してもらって、退職日を今月末日に変更することは可能です。

しかし、本人が同意しない場合は、最初の退職届のとおり、来月末日付で退職の処理をしないといけません。

もし、本人の同意がない状態で、会社が退職日を変更すると、本人の意思ではなく、会社の意思で、労働契約を解約したことになりますので、「退職」ではなく、「解雇」と判断されます。

そうなると、労働基準法(第20条)で定められている解雇予告の手続きが義務付けられたり、労働契約法(第16条)で定められている正当な解雇理由が求められたりします。

もし、1年後に不当解雇と主張されると、在籍と1年分の賃金の支払いが求められますので、退職届と異なる日付で退職の処理をしてはいけません。

以上のとおり、本人から同意が得られれば退職日を変更できますので、1ヶ月分の賃金を支払うことを条件にする等、会社から提案する条件によって、応じることが見込まれる場合は、会社から説得をしても良いと思います。

しかし、その見込みがない場合は、本人と話し合っているときに、別の問題が表面化したり、更に関係が悪化したりすることを考えると、最初の退職届のまま処理をするのが賢明なように思います。

また、「従業員が12月31日付で退職届を提出しましたが、当社は12月29日から1月3日まで年末年始休業ですので、12月28日付で退職の手続きをしても良いですか?」と相談されることがあります。

このような場合も、会社が一方的に退職日を変更することはできません。変更する場合は、本人の同意が必要です。

休日の関係で最終日(退職日)に出勤しないケースがありますが、形式上は最終日(退職日)まで会社に在籍していることになります。

12月28日付で退職の手続きをすると、会社は12月分の社会保険料(健康保険と厚生年金保険の保険料)の負担を免れます。

12月31日付で退職をして、次の転職先の入社日が1月1日で決まっている場合は、従業員にとっては健康保険等の空白期間が生じないというメリットがあります。

一方、退職日を12月28日付に変更すると、従業員はその翌日から12月末日まで、他の医療保険制度に切り替えて加入する必要があります。

つまり、3日間のために、国民健康保険に加入するか、健康保険の任意継続をするか、家族の被扶養者になるか、選択しないといけません。また、12月は国民年金に加入する必要があります。

家族の被扶養者になる場合を除いて、丸1ヶ月分の健康保険及び国民年金の保険料が掛かります。費用や手間を考えると、従業員にとってはデメリットが大きいので、退職日の変更について、普通に考えると同意はしないと思います。