再雇用後の労働条件
再雇用後の労働条件
従業員が60歳で定年退職して再雇用するときに、賃金を引き下げようと思っていますが、本人が同意しなかった場合はどうなりますか?
会社が提示する賃金額や他の労働条件によりますが、それが合理的な範囲内であれば、受け入れるかどうかは本人が決めることです。受け入れない場合は退職することになります。
高年齢者雇用安定法によって、60歳の定年制を採用している会社は、定年後も引き続いて再雇用する制度(継続雇用制度)を導入して、本人が希望すれば65歳まで雇用を確保することが義務付けられています。
再雇用とは、一旦会社を退職して、改めて採用(雇用)することを言います。新しく労働契約を締結して賃金額等の労働条件を決め直しますので、それまでの賃金額等の労働条件は無効になります。
通常、従業員を採用するときは、会社が賃金額等の労働条件を決定して、応募者に提示します。本人が納得しなければ、入社を辞退することになります。再雇用する場合も同様に、会社が労働条件を決定します。
高年齢者雇用安定法は、会社に対して雇用を確保する措置を講じることを義務付けていますが、労働条件の内容を引き継ぐことは義務付けていません。
そして、会社が提示した賃金額等の労働条件を受け入れるかどうかは、本人の判断によります。本人が「それは受け入れられない」と拒否した場合は、労働契約は不成立となって、再雇用しない(退職する)ことになります。
法律上は、継続雇用制度を導入していれば、結果的に、再雇用しない者がいても違法にはなりません。本人が継続雇用を希望しなかったことになります。
しかし、再雇用をするときに、賃金額等の労働条件を不当に引き下げることは許されません。裁判例によって、次の事項を考慮して合理的な範囲内であることが求められます。
- 業務の内容
- 業務に伴う責任の程度
- 配置転換や転勤の範囲
- その他の事情
定年後の再雇用という事情を加味して、同一労働同一賃金と同様の枠組みで判断されます。どこまでなら認められるのかという具体的な基準がありませんので、判断が難しいですが、過去に同じ程度の労働条件で再雇用したという実績があれば認められやいです。
なお、雇用保険の高年齢雇用継続給付は、60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合に、各月の賃金の15%相当額未満の額が支給されます。このことから、61%まで低下することは、一般的に想定の範囲内と考えることができます。
従業員には、定年前後で1.2.3.4.がこのように変わって、それに応じた賃金であることを説明する必要があります。同意を得るために、業務内容や労働時間・労働日数を変更することも考えられます。何も変わらないで、賃金額だけを引き下げることは認められません。
また、退職させるために、不当に低い労働条件(賃金額)を提示しても認められません。もし、裁判所に訴えられると、「労働条件の引き下げは無効で、定年退職時にさかのぼって賃金を支払え」と命じられる恐れがあります。
従業員が受け入れないケースを考えると、定年退職の2〜3ヶ月前から本人に打診をすることが望ましいです。
定年退職の直前に労働条件を提示して、話し合う時間が不十分なまま再雇用しない(退職する)ことになると、会社は誠実ではないと判断されて、立場が不利になってしまいます。
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