解雇理由証明書の交付

解雇理由証明書の交付

従業員を解雇したところ、「解雇理由証明書を提出して欲しい」と言ってきました。会社は応じないといけないのでしょうか?

労働基準法で定められている事項ですので、従業員が請求してきた場合は、会社は解雇理由証明書を作成して、交付する必要があります。

労働基準法(第22条)によって、次のように規定されています。

「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」

従業員が退職するときに、雇用された期間、業務の種類、地位、賃金、退職の理由について、証明書を請求した場合は、会社は交付することが義務付けられています。

また、証明書には従業員が請求した事項のみを記載することになっていて、従業員が解雇理由の証明書を請求してきた場合は、会社は解雇理由を記載した証明書を交付しないといけません。会社が交付を拒否すると、労働基準法違反になります。

ただし、労働基準法による請求権の時効は2年間と定められていますので、退職日(解雇日)から2年以上が経過した元従業員による請求については、交付を拒否することができます。

そして、解雇は就業規則に基づいて決定するケースが一般的ですので、解雇理由証明書には、具体的な事情(傷病、能力不足、事業の縮小等)や違反行為の内容、及び、就業規則の解雇事由のどれ(就業規則第○条第○号)に該当して解雇したのかを記載します。

その場合に、後から別の解雇事由を追加しても認められにくいので、解雇事由が1つでない場合は、具体的な事情や違反行為の内容及び就業規則の解雇事由(第○条第○号)は漏れなく列挙してください。

従業員が解雇理由証明書の提出を求めてきたということは、解雇理由に納得していないケースが大半で、不当解雇として解雇の撤回や解決金の支払いを求めるための準備の可能性が高いです。その後の交渉にも影響しますので、解雇理由証明書は慎重に作成する必要があります。

なお、解雇理由証明書の書き方(様式)は特に決まっていません。厚生労働省(東京労働局)のホームページで解雇理由証明書の様式例が公開されていますので、参考にすると良いでしょう。

また、解雇理由証明書を請求された場合は、労働基準法では“遅滞なく”交付することとされています。具体的な期限は定められていませんが、個人的には、特別な事情がなければ2週間前後で交付できると思います。

円滑に処理をするために、普段から、従業員が就業規則に違反する言動をしたときは、その都度、指導や懲戒処分をして、記録を残しておくことが重要です。

記録を残しておくと、トラブルに発展したときに、解雇の正当性を主張しやすくなります。会社が違反行為を放置していると(指導や懲戒処分を怠っていると)、本人は違反行為をしたとは思っていませんので、急に解雇をするとトラブルになりやすいです。