経歴詐称を理由とする解雇

経歴詐称を理由とする解雇

採用面接で、前の会社を退職した理由を聴いたところ、「人間関係が原因で辞めた」と回答したのですが、実際は解雇されたようです。虚偽の回答として、会社は解雇できますか?

前の会社での解雇理由によりますが、解雇は認められない可能性が高いと思います。

経歴詐称は、会社との信頼関係を損ない、配置や賃金の決定を誤らせて、会社の秩序を侵害する恐れがあることから、正当な解雇理由となります。

「その事実を知っていたら採用しなかった」と言えるような重大な経歴詐称であれば、解雇は有効と認められます。

一般的には、履歴書や採用時の提出書類に虚偽の記載をしたり、採用面接の際に虚偽の回答をしたりするケースがあります。

そして、試用期間中に一緒に仕事をしている間に、周りの従業員が違和感を感じて、経歴詐称が発覚することがあります。

採用面接の際に会社から、「会社都合による解雇だったのか?」、「自己都合による退職だったのか?」と聴いて、実際は解雇されたのに、「自己都合で退職した」と回答していれば虚偽になります。

しかし、「人間関係が原因で前の会社を辞めた」と回答したということですが、「辞めた」を拡大解釈すると、「離職した」「解雇された」という意味もあると考えられます。そうなると、虚偽や経歴詐称には当てはまりません。

なお、履歴書に「賞罰」の欄がありますが、罰については、「確定した有罪判決」を記載すれば十分とされています。前の会社で懲戒解雇されたとしても、その事実を記載する義務はありません。

また、「賞罰」の欄がない履歴書(現在のJIS規格の履歴書もそうです)であれば、「確定した有罪判決」も自発的に申告する義務はありません。

ただし、前の会社の解雇理由によっては、解雇できる可能性はゼロではありません。

例えば、自己都合退職だったと勘違いしたまま、お金を扱う経理部門に配属して、その者が前の会社で横領して懲戒解雇された事実が発覚し、配置転換の余地がない場合は、解雇は有効と認められる可能性があります。

しかし、会社の確認が不十分だったという落ち度がありますし、解雇が認められない可能性もありますので、会社としては解雇より退職勧奨を優先した方が良いと思います。

また、無断欠勤を理由にして前の会社を解雇されたけれども、今の会社では無断欠勤をしていないような場合は、解雇は認められないでしょう。

ところで、「その事実を知っていたら採用しなかった」と言えるような重大な経歴詐称であれば、解雇は有効と認められると言いましたが、会社として重要な事項であれば、採用面接の際に掘り下げて確認してください。

1個の質問で終わらせていると、会社として重視していなかったと受け取られかねません。善意で解釈をすると間違いますので、具体的にどのようなことがあったのかを聴くことが大事です。

具体的なことを2つ3つ聴いていれば、解雇されたという事実が明らかになったかもしれません。