解雇の要求

従業員が「退職したいのですが、解雇扱いにして欲しい」と言ってきました。従業員の要求に応じても問題はないでしょうか?

問題がありますので、そのような要求には応じるべきではありません。

会社都合による解雇の場合は、自己都合による退職の場合と比べて、次のように、雇用保険の失業給付が有利になります。

  1. 自己都合退職の場合は、退職後3ヶ月間の給付制限期間が経過してからでないと支給されません。一方、解雇の場合は、給付制限期間がなく直ぐに支給されます。
  2. 自己都合退職の場合は、雇用保険の加入期間に応じて、90日分から150日分の範囲内で支給されます。一方、解雇の場合は、雇用保険の加入期間と年齢に応じて、90日分から330日分の範囲内で支給されます。

自己都合退職の場合は自分で退職日を選べますので、退職後の生活に関して、ある程度の準備を行えます。一方、会社都合による解雇の場合は、普通は時間的な余裕がなく十分な準備ができません。

そのため、解雇された者は保護をする必要性が高いと考えられていて、失業給付が有利に取り扱われることになっています(横領等の重大な責任、理由があって解雇される者は除きます)。

「従業員が得をするんだったら協力してあげても良いかな」と考える経営者がいるかもしれません。しかし、会社が「解雇扱いにして欲しい」という従業員の要求に応じると、次のようなリスクがあります。

  1. 将来、不当解雇として訴えられる可能性がゼロではありません。解雇をする正当な理由がありませんので、解雇は無効と判断され、その間の賃金の支払を請求される可能性があります。
  2. 仮に、今回要求してきた従業員は信頼できるとしても、次に同じような要求をしてくる従業員が現れたときに、応じないと(応じても)トラブルになってしまいます。
  3. ハローワークに対して事実と異なる虚偽の届出をすることになりますので、会社は詐欺(相手をだまして利益を得た)の共犯になってしまいます。
  4. 労働基準法により、解雇予告の手続きが義務付けられます。つまり、30日以上前に解雇の予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わないといけないのですが、もちろん、自己都合退職の場合は不要です。
  5. 会社が虚偽の届出や法律違反をしていると、従業員は会社に対して不信感を持ち、信頼関係を損ねる恐れがあります。
  6. 解雇の実績が付きますので、助成金を受給できなくなる場合があります。

以上により、「解雇扱いにして欲しい」という従業員の要求には応じるべきではありません。 「自己都合で退職するのは構わないけど、解雇することはできない」と伝えてください。