試用期間中の欠勤を理由とする解雇
試用期間中の欠勤を理由とする解雇
先日、採用した従業員が、試用期間中に体調不良を理由にして欠勤を繰り返しています。本採用を拒否しても問題はないですか?
欠勤の頻度、職務の内容、体調不良の原因、今後の欠勤の見込み等を考慮して、本採用の拒否(解雇)が認められる場合があります。無効と判断される場合もありますので、慎重に検討する必要があります。
本採用の拒否は、法律的には解雇と同じです。労働契約法(第16条)によって、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。
要するに、解雇をするときは、一般常識で考えて、解雇されても仕方がないと認められるような理由が必要ということです。
そして、試用期間とは、長期雇用を前提とする従業員について、採用しても問題がないか、能力や適性を見極める期間とされています。そのため、試用期間中の解雇は、本採用後の解雇と比べて、正当と認められる範囲が広いと考えられています。
欠勤を繰り返す従業員については、まずは、その頻度が問題になります。
労働基準法では、出勤率が8割以上の従業員に対して、年次有給休暇を付与することが定められています。年次有給休暇とは、一定期間勤続をした従業員に対して、心身の疲労を回復して、ゆとりのある生活を保障するために定められた制度です。
出勤率が8割未満の従業員は、そのような保障の対象外とされていますので、8割という出勤率が1つの基準になると考えられます。
また、工場の生産ラインなど、一定数の人員を配置しないと、直ちに業務に支障が生じるような職務への配置を予定している場合は、出勤率が8割以上であっても、本採用の拒否(解雇)が認められる可能性があります。
しかし、その体調不良(ケガや病気)が、業務が原因で生じたものである場合は、会社に責任がありますので、本採用の拒否(解雇)は認められません。
解雇制限と言って、労働基準法(第19条)によって、業務上の傷病によって休業する期間及びその後30日間は、解雇が禁止されています。
私傷病の場合は、労働基準法の解雇制限の規定は適用されませんが、会社の就業規則で、試用期間中の従業員にも休職を適用することになっていて、休職事由に該当する場合は、休職を適用しないといけません。休職期間が満了しても復職できなければ、自動退職という扱いになります。
また、体調不良の回復の程度によりますが、欠勤を繰り返すのは今だけで、しばらくすれば復調することが診断書によって示されれば、本採用の拒否(解雇)は認められにくくなります。
一方、勤務を継続することによって、病状が悪化する恐れがあったり、勤務を制限する必要があって、それが難しい場合は、本採用の拒否(解雇)は認められやすくなります。
次に、本採用を拒否する場合に、注意点があります。
本採用の拒否は解雇と同じですので、労働基準法(第20条)で定められている解雇の予告の手続きが必要です。
具体的には、30日以上前に解雇の予告をするか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わないといけません。例えば、10日前に解雇の予告をして、平均賃金の20日分の解雇予告手当を支払う方法も可能です。
ただし、試用期間で採用して2週間以内に解雇する者については、労働基準法の解雇予告の規定は適用されません(解雇の予告の手続きは不要です)。
ところで、試用期間から早々に欠勤を繰り返す従業員については、それ以前から体調不良の問題を抱えている場合が多いと思います。
採用面接の際に、会社から「健康状態はいかがですか?」と聴いて、応募者が「良好です」と答えて終わっていると、同じことを繰り返してしまいます。「直近の1年間で何日くらい会社を休みましたか?」「その理由は?」と具体的な質問を繰り返すことが大事です。
なお、試用期間中に、うつ病などの病気が発覚したというだけで、業務に支障が生じていなければ、解雇は認められません。
解雇が有効か無効か判断が難しいケースが多いと思いますが、本人と話し合った上で、退職勧奨をする方法も考えられます。例えば、1ヶ月分の賃金を支払うことを条件にして、退職届を提出してもらって、退職扱いとして処理をすれば、解雇の問題は生じません。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。
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