危険手当と割増賃金の基礎
危険手当と割増賃金の基礎
当社では危険な作業を行う必要があって、その作業をした従業員に対して、1日につき1,600円の危険手当を支給しています。危険手当は、割増賃金の基礎となる賃金に含めないといけませんか?
その危険な作業を時間外に行ったときは、危険手当を割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しないといけません。一方、危険手当の対象外の通常業務を時間外に行ったときは、危険手当を含めなくても構いません。
労働基準法(第37条)によって、時間外労働、休日労働、深夜労働の時間に対して、割増賃金を支払うことが義務付けられています。
そして、労働基準法及び労働基準法施行規則によって、次の賃金(手当)については、割増賃金の基礎となる賃金に算入しないことが定められています。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
割増賃金の基礎となる賃金から除外できるのは、この7種類の賃金(手当)に限定されています。危険手当は、どれにも該当しませんので、割増賃金の基礎となる賃金に算入する必要があります。
そして、「通常の労働時間又は労働日の賃金」を基準にして、時間外労働、休日労働、深夜労働の時間に応じて、1.25倍や1.35倍の割増賃金を支払います。「通常の労働時間又は労働日の賃金」は、労働基準法施行規則によって、次のように定められています。
- 時間によって定められた賃金については、その金額
- 日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数で除した金額
- 月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数で除した金額
要するに時間給に換算した金額が基準になります。危険手当を日額で決定している場合は、その日の所定労働時間で割った金額です。
例えば、危険手当が1日につき1,600円、1日の所定労働時間が8時間とすると、1時間につき200円です。危険手当の支給対象となる作業をしている時間(日)は、時間給が200円アップすると考えられます。
そして、基本給や他の手当も同様に時間給に換算して、危険手当を除いた額が1,400円だったとします。
危険手当の支給対象となる業務を時間外に行った場合は、その時間の勤務は1,600円(1,400円+200円)が基準になりますので、1.25倍の時間外勤務手当は1時間につき2,000円になります。この場合は、危険手当を含んだ賃金が基準になります。
一方、危険手当の支給対象でない通常業務を時間外に行った場合は、その時間の勤務は1,400円が基準になりますので、1.25倍の時間外勤務手当は1時間につき1,750円になります。この場合は、危険手当を含まない賃金が基準になります。
このように、危険手当を支給したり、しなかったりする場合は、時間外に行った業務によって、割増賃金の基準となる額が変動します。休日労働や深夜労働を行った場合も、考え方や計算方法は同じです。
日額で支給する危険手当について解説しましたが、同様に月額で支給したり、しなかったりする賃金(手当)として、皆勤手当があります。皆勤手当についても考え方や計算方法は同じです。
皆勤手当が支給される月は、皆勤手当を割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算する必要があります。一方、皆勤手当が支給されない月は、皆勤手当は含めなくても構いません。どちらも、その月の1時間当たりの賃金額が基準になります。
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