休日の出張に対する休日勤務手当の支給義務

休日の出張に対する休日勤務手当の支給義務

月曜日の午前中に遠方の取引先に訪問するために、休日の日曜日に移動(出張)したときは、会社は休日勤務手当を支払わないといけませんか?

日曜日の移動時間は、原則的には、労働時間には当たりませんので、労働基準法上は、休日勤務手当を支払う義務はありません。

労働時間に対して、会社は賃金を支払う義務がありますので、従業員が休日労働をしたときは、休日労働の時間に対して、1.35倍の休日勤務手当を支払わないといけません。しかし、労働時間でなければ、賃金(休日勤務手当)を支払う必要はありません。

労働基準法において、労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれている時間のことを言います。

出張のため、休日に電車で移動する場合の移動時間は、居眠りをしたり、ビールを飲んだり、本を読んだりして、従業員は自由に過ごせますので、会社の指揮命令下に置かれているとは言えません。したがって、移動時間は、労働時間には当たりません。

自分で自動車を運転して移動(出張)をする場合は、そこまでの自由はありませんが、会社の指揮命令下にないことは同じです。

要するに、出張のための移動時間は、通勤時間と同じようなものと考えれば分かりやすいと思います。通勤時間に対して、会社は賃金を支払う義務はありません。

しかし、例外的に、移動中に商品や現金を監視させたり、会社が特別な指示・命令をしている場合は、監視行為等が業務になりますので、移動時間は労働時間に当たります。

また、商品を取引先に納入することが目的で出張する場合は(この場合は出張とは言わないと思いますが)、商品を持って行く行為自体が業務と考えられます。このような場合は、会社は賃金(休日勤務手当)を支払う義務があります。

したがって、特別な事情がない限り、通常の出張については、休日の移動時間に対して、労働基準法上は賃金(休日勤務手当)を支払う必要はありません。

しかし、従業員にとっては、休日の時間が会社の命令で拘束されますので、従業員の不満を解消するために、会社は休日の出張に対して、何らかの手当を支給することが望ましいです。

このような理由から、労働基準法上は義務ではありませんが、多くの会社では、宿泊を伴う出張に対して、日当(出張手当)を支払っています。