仕事が遅い従業員の残業手当(割増賃金)
仕事が遅い従業員の残業手当(割増賃金)
仕事が遅い従業員は残業が長時間になって、同じ仕事量でも他の従業員より残業手当が高額になっています。仕方がないのでしょうか?
残業手当(割増賃金)の支払いは、労働基準法で義務付けられていますので、適正に支払った上で、賞与の支給額で調整する、昇給を抑制する、仕事量を調整するといった対応策が考えられます。
同じ仕事量を与えたときに、仕事が遅いAさんは長時間の残業をして、残業手当(割増賃金)が高額になります。一方、仕事が早いBさんは残業しないで処理をして、残業手当(割増賃金)が低額になります。
仕事量=貢献度とすると、AさんとBさんの賃金の総額は同じであるべきです。しかし、基本給が同じとすると、Aさんの方が割増賃金の分だけ賃金総額が高くなります。優秀なBさんの賃金総額が高いならまだしも、会社としては納得できないと思います。
労働基準法(第37条)によって、従業員が時間外労働(残業)をしたときは、125%の割増賃金(残業手当)を支払うことが義務付けられています。
しかし、仕事が遅いことが原因で残業手当が高額になっている状態を放置していると、周りの従業員が不満を持ったり、ゆっくり仕事をするようになるかもしれません。
会社は労働基準法を遵守した上で、対応策を検討する必要があります。例えば、次のような対応策が考えられます。
- 賞与の支給額で調整する
- 昇給を抑制する
- 仕事量を調整する
賞与の支給額を具体的に約束していなければ、賞与の支給額は、会社が貢献度等を評価して、従業員ごとに自由に決定できます。
また、昇給も義務ではありませんので、昇給額は従業員ごとに会社が自由に決定できます。ただし、降給をする場合は、労働条件の不利益な変更に当たりますので、労働契約法(第8条)によって、本人の同意が必要です。
仕事の配分方法(仕事量の調整)も会社の自由です。
そして、調整する金額の決定方法としては、次のような方法があります。
- 残業手当や賞与等を含めて、過去1年間に支払った賃金総額を個人別に算出して、金額順に並べます
- 直感で従業員を貢献度順に並べます(従業員の貢献度を把握できる範囲内に限られます)
- 直感が正しいと仮定して、1.の賃金総額と2.の貢献度の順位が逆転している所があれば、順当になるように、賞与の支給額や次回の昇給で調整します
場合によっては、複数年を要するケースがあるかもしれません。
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