大入り袋と割増賃金の基礎
大入り袋と割増賃金の基礎
1ヶ月間の売上げ目標を達成した店舗の従業員に、1万円の大入り袋を支給していますが、これは割増賃金の基礎となる賃金に含めないといけませんか?
大入り袋の支給が1年に1回あるかないかという頻度の場合は含めなくても良いと思いますが、そうでない場合は含めないといけないと判断される可能性が高いです。
割増賃金の基礎となる賃金から除外できる賃金(手当)として、労働基準法施行規則によって、次の7つの賃金(手当)が列挙されています。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらに該当しない賃金(手当)は、割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しないといけません。
大入り袋がどれかに該当すると仮定すると、「6.臨時に支払われた賃金」又は「7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」が考えられます。なお、ここでは「大入り袋」と呼んでいますが、実態で判断されますので、名称は関係ありません。
「7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」について、通常は賞与が該当します。賞与とは、支給額があらかじめ確定していないものを言います。ご相談の大入り袋は、月額1万円と支給額があらかじめ確定していますので、賞与とはみなされません。
また、ご相談の大入り袋は1ヶ月単位で支払っていますので、「7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」には該当しません。1ヶ月を超える期間を単位としている必要がありますので、売上げ目標を達成した“日”を対象にして支払っている場合も同じです。
次に、「6.臨時に支払われた賃金」は、臨時的、突発的な事由に基づいて支給するもので、結婚祝金や傷病見舞金など、支給事由の発生が不確定で稀にしか発生しないものとされています。
結婚祝金や傷病見舞金と照らし合わせると、大入り袋の支給が1年に1回あるかないかという頻度の場合は、これに該当するかもしれませんが、そうでない場合は該当しないと判断される可能性が高いです。
どの程度の頻度であれば“臨時的”に当たるのか、法律や通達で具体的に示されていませんので、判断が難しいです。1年のうち、3ヶ月や6ヶ月程度の支給実績があると、不確定で稀とは言いにくいです。
なお、厚生労働省の東京労働局労働基準部監督課が発行している「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」では、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる「臨時の賃金」の例として、結婚手当、出産手当、大入り袋が列挙されています。
大入り袋の支給頻度は会社によって異なりますので、(説明がないまま)大入り袋が例示されているのは適切ではないように思いますが、除外できるケースと除外できないケースがあるということです。
大入り袋を支給して、割増賃金の基礎となる賃金に含めていない場合は、指摘される恐れがありますので、注意が必要です。大入り袋の制度を廃止して、賞与の支給対象期間内で同様の評価をして、賞与に含めて支払えば、割増賃金の基礎となる賃金から確実に除外できます。
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