残業手当と賞与の優先順位

残業手当と賞与の優先順位

知り合いの社長に、「残業手当は支払っていないけど、その代わりに賞与は支払っている」と言うと、「賞与を支払っているんだったら、その前に残業手当を支払うべきだ」と言われました。そうなのでしょうか?

知り合いの社長が言われたとおりです。

賞与を年間で数十万円も支払っているにもかかわらず、適正に残業手当を支払っていない会社があります。

例えば、「賞与は基本給の2ヶ月分」というように、具体的な支給額を約束している場合は別ですが、賞与をいくら支給するかは、会社が自由に決められます。

賞与は労働基準法などの法律で支給が義務付けられているものではありませんので、(賃金規程の規定の仕方によりますが)業績等によっては賞与を支給しなくても構いません。それでも法律違反を問われることはありません。

しかし、残業手当は、労働基準法で支給が義務付けられていますので、支給しないと労働基準法違反になります。「残業手当を支払う代わりに賞与を支払っていた」と言っても通用しません。

つまり、年間の支給額が同じ次の2つの会社

  1. 残業手当は支払っていないけど、賞与は支払っている会社
  2. 賞与は支払っていないけど、残業手当は支払っている会社

があったとすると、1.は法律違反をしている会社、2.は適法な会社ということになります。

そして、1.の会社で、残業手当の未払い(法律違反)が発覚したときは、労働基準法に基づいて、残業手当を支払うよう求められます。残業手当のみの支払いで済んでいたはずが、結果的に、賞与プラス残業手当の支払いになります。

したがって、賞与を支払う余裕があるのであれば、その分を残業手当の支払いに回すべきです。その上で余裕がある場合に、賞与の支給を検討するようにしてください。