半日単位の年次有給休暇と時間外労働の割増賃金

半日単位の年次有給休暇と時間外労働の割増賃金

当社では、年次有給休暇を半日単位(時間単位)で取得することを認めています。午前に半日の年次有給休暇を取得して、午後から出勤して、そのまま終業時刻を超えて勤務した場合は、時間外勤務手当の支払いはどうすれば良いでしょうか?

労働基準法上は、実働時間が8時間以内の部分については、1.00倍の通常の賃金を支払っていれば、問題はありません。

例えば、始業時刻が8時、終業時刻が17時、休憩時間が12時から13時まで、所定労働時間が1日8時間の会社で考えてみましょう。

実際に所定どおり勤務をして、引き続き17時の終業時刻を超えて19時まで勤務したとすると、1日8時間を超える2時間に対して、1.25倍の時間外勤務手当を支払うことが義務付けられます。

同じ条件で、午前に年次有給休暇を取得して、13時に出勤して19時まで勤務したとすると、終業時刻以降の2時間の取扱いが問題になります。同様に、1.25倍の時間外勤務手当を支払わないといけないのでしょうか。

ところで、労働基準法の割増賃金の規定は、時間外労働・休日労働・深夜労働を抑制して、過重労働による健康障害を防止すること、及び、負担の伴う勤務をした従業員に対して補償することを目的として設けられたものです。規定の趣旨に照らし合わせると、実働時間に基づいて処理をする方法が合理的と考えられます。

13時から19時まで実際に勤務したとすると、実働時間は6時間です。8時間以内ですので、労働基準法上は1.25倍の割増賃金(時間外勤務手当)を支払う義務はありません。

これは、0.25倍の割増し分の支払い義務がないということで、終業時刻以降の2時間が無給で良いという訳ではありません。少なくとも、1.00倍(×2時間)の通常の賃金を支払う必要があります。

以上については、労働基準法に基づいた取扱いです。就業規則(賃金規程)の労働条件が労働基準法の労働条件を上回る(従業員にとって有利に規定している)場合は、就業規則(賃金規程)の方が優先して適用されます。

例えば、就業規則(賃金規程)で、「所定労働時間を超えて勤務したときは、1.25倍の時間外勤務手当を支払う」と定めている場合は、所定の終業時刻以降の労働時間に対して、1.25倍の時間外勤務手当を支払う必要があります。

一方、「法定労働時間を超えて勤務したときは、1.25倍の時間外勤務手当を支払う」と定めている場合は、最初に説明したとおり、1.00倍の通常の賃金を支払っていれば問題はありません。

半日単位の年次有給休暇を取得した場合で説明しましたが、時間単位で年次有給休暇を取得した場合も同じです。割増賃金の対象となる労働時間を計算するときは、実働時間が基準になります。