年次有給休暇と通勤手当の支払い

年次有給休暇と通勤手当の支払い

当社の従業員は全員が自動車で通勤していて、通勤手当を支給しています。年次有給休暇を取得した日も通勤手当を支払わないといけない(減額できない)のでしょうか?

原則的には、自動車通勤をしている者については、年次有給休暇を取得した日数分の減額が可能と考えられますが、就業規則(賃金規程)に減額する旨を規定することが望ましいです。

通勤手当の支給額の決定方法は、主に自動車通勤の場合と電車通勤の場合に分かれます。

自動車通勤の場合

自動車通勤をする従業員に支給する通勤手当の支給額の決定方法は、次のどちらかに当てはまるケースが一般的です。

  1. 通勤距離に応じて、月額で決定する
  2. 通勤距離に応じて、日額で決定して、出勤日数を掛ける

稀に、通勤距離に関係なく全員一律の金額(全員1万円など)で通勤手当を支給している会社がありますが、その場合は、このページの内容は当てはまりません。

1.2.のどちらかに該当している場合は、通勤手当は通勤に要する費用(主にガソリン代)を補助するために支給していると考えられます。

通勤手当を支給する目的に照らし合わせて考えると、年次有給休暇を取得した日は補助の対象となるガソリン代が掛かっていませんので、通勤手当を支給するのは不合理です。欠勤した場合や他の休暇・休業を取得した場合も同じです。

しかし、就業規則(賃金規程)で明確に規定していないと、満額が支給されると思い込んでいる従業員から満額を支給するよう求められて問題になる恐れがあります。

就業規則(賃金規程)に、出勤しなかった日があれば通勤手当を減額すること及びその計算方法を規定しておくことが望ましいです。明確に規定していれば、従業員に説明しやすいですし、納得も得られやすいです。

  1. の場合は、出勤しなかった日数に応じて減額すること
    又は、実際に出勤した日数に応じて計算し直すこと
  2. の場合は、実際に出勤した日数を基準とすること

なお、年次有給休暇を取得した日は通勤手当を減額しなければならないのではなく、減額できるということです。従業員にとって有利に取り扱うことは可能ですので、満額の通勤手当を支払っても問題はありません。

電車通勤の場合

一方、電車通勤をする従業員には、通勤定期代の相当額を通勤手当として支給している会社が一般的です。この場合の通勤手当も、通勤に要する費用を補助するために支給していると考えられます。

従業員が年次有給休暇を取得して通勤しなかったとしても、その月の通勤定期代は支払い済みで、通常は本人に返金されることはありません。

通勤手当を支給する目的に照らし合わせると、従業員の負担額は変わりませんので、通勤手当を減額することは不合理と考えられます。

しかし、電車を利用する日数によっては、1ヶ月の通勤定期代より、出勤日数分の運賃(1回ごとの合計額)の方が低額になるケースがあります。

通勤に要する費用を補助することをベースに考えると、実際の負担額まで通勤手当を減額することは合理的と考えられます。

従業員が退職するときに、退職日まで丸々1ヶ月年次有給休暇を取得して、一切出勤しないケースがあります。その場合は、通勤に要する費用はゼロですので、その月の通勤手当は不支給にできます。

就業規則(賃金規程)には、通勤手当は実費相当額を支給することとして、原則として定期券代の実費、場合によっては実際の出勤日数分の運賃の実費とすることがあることを記載しておけば、減額する場合に説明しやすいと思います。