年次有給休暇の取得と賞与の減額

年次有給休暇の取得と賞与の減額

年次有給休暇の取得が特別に多い従業員がいて、不公平ではないかという意見が出ています。賞与を減額しようと考えていますが、問題はありますか?

年次有給休暇を取得したことを理由にして、賞与を減額するなど、不利益な取扱いをすることは労働基準法で禁止されています。

病気のときにしか年次有給休暇を利用しない従業員と、付与した年次有給休暇を使い切る従業員を比較して、経営者として、前者を「がんばってくれた」と評価したい気持ちは理解できます。

しかし、労働基準法(第136条)によって、年次有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをすることが禁止されています。

もし、不利益な取扱いが可能とすると、それを避けるために、従業員は年次有給休暇を取得しないようになります。そうなると、年次有給休暇を取得する権利があることを、労働基準法で定めている意味がなくなってしまいます。

年次有給休暇を取得したことを理由にして賞与を減額すること、及び、年次有給休暇を取得した日を欠勤した日とみなして賞与を査定することは、どちらも不利益な取扱いに該当します。

また、年次有給休暇を取得しなかった従業員の賞与を増額する行為も、結果的に(相対的に)、年次有給休暇を取得した従業員の賞与を減額する行為と同じです。

年次有給休暇の取得を抑制するような取扱いは、不利益な取扱いに該当すると考えられます。労働基準法に違反する行為として、減額をした差額の支払いを求められる恐れがあります。

がんばってくれた従業員を評価したいのであれば、年次有給休暇の取得(日数)とは異なる対象を設定する必要があります。

しかし、一般企業において、そもそも賞与とは、利益が生じた場合にその一部を従業員に還元するものです。また、賞与の支給額は、企業の業績や各人の貢献度等に応じて決定する方法が一般的です。

個人的には、がんばってくれたかどうかより、企業の業績にどの程度の貢献をしてくれたのかが重要ではないかと思います。

昔は、長時間労働や休日出勤をしている従業員は「がんばっている」と評価されましたが、今は、長時間労働や休日出勤をしないで効率的に業務を処理する従業員の方が評価されます。年次有給休暇の取得日数についても、これと似たような面があるのではないでしょうか。