通勤手段(電車通勤)の強制

通勤手段(電車通勤)の強制

会社は従業員の通勤手段(例えば、電車通勤)を強制できますか?

原則的には、会社が通勤手段を強制することはできませんが、安全配慮義務を根拠にして、自動車通勤を禁止して許可制にすることはできます。

通勤手段としては、次の方法があります。

基本的に通勤は私的な行為ですので、「電車で通勤しなさい」「自動車で通勤しなさい」と、会社が通勤手段を強制することはできません。

しかし、労働契約法(第5条)によって、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されています。

会社には安全配慮義務があって、従業員に危険が及ばないように配慮することが義務付けられています。万一、会社が危険を把握していたにもかかわらず、放置して、従業員が負傷したり、病気になったりしたときは、会社は損害賠償を請求されます。

自動車で通勤する場合は、交通事故の発生が想定されますので、安全配慮義務を根拠にして、自動車通勤は原則禁止として、許可制にすることができます。

通常は、自動車通勤規程や通勤車両管理規程を作成して、十分な任意保険に加入していること、駐車場の確保、運転歴、事故歴など、必要に応じて許可の基準を設定します。

また、近年は、自転車を運転する者が加害者になって、被害者が死亡したり、被害者に後遺症が残ったりする事故が増加しています。数千万円の損害賠償を命じる裁判例も珍しくありませんので、自動車通勤と同様に、原則禁止として、許可制にする方法が望ましいです。

自動車通勤規程や自転車通勤規程を作成して、許可の基準を満たさない従業員については、自動車通勤や自転車通勤を禁止できます。

その上で、複数の通勤手段がある場合に、安全上の問題がある場合は別ですが、会社の管理下にありませんので、どの手段で通勤をするのかは本人の自由です。

ただし、就業規則(賃金規程)で、通勤手当として「会社が認めた通勤経路で往復した場合の費用」を支給すると規定していれば、その費用を支払うことになります。会社が認めていない通勤経路(通勤手段)の費用を支払う必要はありません。

会社の希望と従業員の希望が異なる場合は、会社が心配していることや事情を説明して、本人と話し合うことが大事です。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。