セガ・エンタープライゼス事件

セガ・エンタープライゼス事件 事件の経緯

会社は従業員に対して、特定の業務分野のないパソナルーム勤務を命じて、退職勧奨を行いましたが、従業員は拒否しました。

その後、会社は、考課順位が下位10%未満で、労働能率が劣り、向上の見込みがない、積極性がない、自己中心的で協調性がない等として解雇しました。

これに対して従業員が、解雇は無効と主張して、従業員としての地位の確認及び賃金の支払いを求めて、会社を提訴しました。

セガ・エンタープライゼス事件 判決の概要

従業員の業務遂行は、次のように平均的な水準に達していなかった。

しかし、平均的な水準に達していなかったからといって、直ちに解雇が有効とはならない。

会社は就業規則の解雇事由の「労働能力が劣り、向上の見込みがない」に該当するとして、解雇しているので、従業員がこれに該当するかどうかについて検討する。

就業規則の他の解雇事由を見ると、「精神又は身体の障害により業務に堪えないとき」、「会社の経営上やむを得ない事由があるとき」など、極めて限定的な場合に限られている。

「労働能率が劣り、向上の見込みがない」についても、これらの事由に匹敵するような場合に限って、解雇が有効となると考えられる。つまり、平均的な水準に達していないというだけでは不十分で、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない。

従業員は、平均的な水準に達していないし、考課順位は会社の中で下位10%未満である。しかし、人事考課は相対評価であって、絶対評価でないことから、直ちに著しく労働能率が劣り、向上の見込みがないと認めることはできない。

他の解雇事由との比較においても、この事由は限定的に適用するものであって、常に相対的に考課順位の低い者の解雇を許容することはできないから、就業規則の解雇事由の「労働能率が劣り、向上の見込みがない」は、相対評価を前提として適用することはできない。

会社は、やる気がない、積極性がない、意欲がない、自己中心的である、協調性がない、反抗的な態度である、融通が利かないと主張するが、これらを裏付ける具体的な事実の指摘がなく、会社の主張は採用できない。

会社が従業員に教育や指導を行った形跡はなく、体系的な教育や指導を実施することによって、労働能率の向上を図る余地があることから、「労働能率が劣り、向上の見込みがない」に該当するとは認められない。

会社は、雇用関係を維持する努力をしたが、従業員を受け入れる部署がなかったと主張する。しかし、異動が実現しなかった理由は従業員に意欲が感じられないといった抽象的なもので、会社が雇用関係を維持するために努力をしたと評価することはできない。

したがって、本件解雇は、権利を濫用するもので無効である。

セガ・エンタープライゼス事件 解説

会社が能力不足を理由とする解雇をして、裁判になったケースです。就業規則の解雇事由として、「勤務成績又は業務能率が不良で、向上の見込みがないとき」といった規定を設けている会社が一般的です。

労働契約法(第16条)によって、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。

原則として、会社には従業員を解雇する権利があるけれども、その権利を濫用することは許されません。相応な理由が必要で、常識で考えて解雇は厳し過ぎると認められると、解雇は無効と判断されます。

解雇されても仕方がないと思われるぐらいの能力不足でないと、解雇は有効と認められません。そして、この裁判では、次の事項を考慮して、解雇は無効と判断しました。

  1. 考課順位が下位10%未満で、相対評価で劣っているとしても、必ず誰かがそこに位置付けられますので、相対評価で考課順位が低いことは、解雇理由として重視されません。
  2. 能力不足を理由として解雇する場合は、向上の見込みがないことが求められます。能力不足は本人の問題ですが、会社が丁寧に教育や指導を実施すれば、向上する可能性がありますので、教育や指導を怠っていると、解雇は無効と判断されます。
  3. そして、解雇は最終手段と考えられていますので、配置転換をするなど、雇用を継続する努力をする必要があります。

従業員を採用して試用期間中に、業務上のミスを繰り返したり、業務命令に違反したりしたときは、その都度、上司は注意や指導をすることが大事です。その後も繰り返して、改善の見込みがないと思われる場合は、試用期間中に解雇(本採用の拒否)を検討するべきです。

本採用を行った後に解雇をすると、「本採用をしたのだから、その程度のミスは許容されるべきだ」と主張される恐れがあります。

能力不足を理由として解雇する場合は、程度の問題ですので、裁判の結果を予測することが難しいです。この裁判例のように、解雇が有効と認められる条件はかなり厳しいと認識しておくべきです。

解雇無効と判断される(さかのぼって賃金を支払わされる)リスクがありますので、退職勧奨を行って、退職金を支払うことを条件に退職届を提出してもらう方法が無難です。

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