在宅勤務手当と割増賃金の基礎となる賃金

在宅勤務手当と割増賃金の基礎となる賃金

当社ではテレワーク(在宅勤務)をする従業員に在宅勤務手当を支払っていますが、割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しないといけませんか?

在宅勤務手当の性質及び支給額の決定方法によって、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる場合があります。

割増賃金(時間外勤務手当)の額は、「通常の労働時間の賃金計算額×1.25×時間外労働の時間数」で算出します。

そして、割増賃金の基礎となる賃金(=通常の労働時間の賃金)から除外できる賃金として、労働基準法及び労働基準法施行規則によって、次の7つの賃金(手当)が認められています。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

そして、近年はテレワーク(在宅勤務)が増加して、在宅勤務手当を支払っている会社があります。この在宅勤務手当が賃金に該当する場合は、割増賃金の基礎となる賃金に含めないといけません。ところで、賃金とは、労働の対償として支払うものです。

しかし、業務に要する費用については、必要経費として会社が負担するべきで、従業員が一時的に立て替えて支払った費用を会社が補填・負担する場合は、実費弁償として支給するもので、賃金には当たりません。

この場合は、賃金ではないということで、割増賃金の基礎に含めなくても構いません。しかし、在宅勤務手当として支給していれば、1万円でも10万円でも除外できるという訳ではありません。

取扱いを明らかにするために、厚生労働省から通達「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」が示されました。

労働基準監督署は通達を根拠にして、会社に対して指導や勧告を行いますので、会社が通達に沿って処理をしていれば、労働基準監督署から指摘されることはありません。

通達によると、在宅勤務の実態を踏まえた上で、就業規則等で実費弁償分の計算方法を明示して、従業員が実際に負担した費用のうち、業務のために使用した金額を特定して支払っている場合は、実費弁償として支給していると認められます。

しかし、在宅勤務手当を毎月一定額で支払って、実費負担がなくても会社に返還する必要がない場合は、実費弁償とは認められません。割増賃金の基礎となる賃金に含める必要があります。

実費弁償に該当するものとしては、事務用品等の購入費用、通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)、電気料金、レンタルオフィスの利用料金等が挙げられています。

そして、実費弁償の具体的な計算方法として、通達では、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(国税庁)」で示されている方法が挙げられています。

国税庁のFAQの計算方法は複雑ですが、簡略化した計算方法として、実費の額を上回らない範囲内で、1日当たりの単価を設定して、在宅勤務をした日数を掛けた額を在宅勤務手当として支給する方法も認められています。

実費の具体的な計算方法を明らかにしていない場合は、割増賃金の基礎となる賃金に算入するよう求められますので、除外する場合はテレワーク(在宅勤務)で費用が発生する項目及びその実費の額を整理する必要があります。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。