パソコンのモニタリング

パソコンのモニタリング

従業員が仕事と関係のないホームページを閲覧していたようです。会社は従業員のパソコンの使用状況を調査しても良いですか?

パソコンのモニタリングは不可能ではありませんが、プライバシーの問題がありますので、いくつかの条件をクリアして慎重に行う必要があります。

従業員が仕事と関係のないホームページを閲覧したり、私的なメールを送受信したりする行為を見過ごすことはできません。従業員は職務に専念する義務がありますので、これに違反する場合は、就業規則に基づいて懲戒処分を行うことが考えられます。

通常は、業務で使用するパソコンは会社の所有物ですので、会社にパソコンを管理する権限があります。したがって、会社は自由にパソコンの使用状況を調査できると考えられます。

その一方で、従業員のプライバシーは保護されるべきですので、その内容を開示するかどうかは本人の判断として、会社によるパソコンの使用状況の調査(モニタリング)を拒否できると考えられます。

また、プライバシーが重視されている今の状況で、説明もなく、上司(会社)がパソコンの使用状況をチェックしたり、メールの内容を見たりすると、従業員は上司(会社)に対して不信感を持って、労使間の信頼関係を損ないます。

労使双方の考え方に正当性がありますので、一方が100対0で認められるものではなく、それぞれの主張を調整することになります。過去の裁判例によると、次の条件をクリアしている場合に限って、会社はパソコンの使用状況を調査する(モニタリングをする)ことが認められます。

1.事前にパソコンの使用状況を調査(モニタリング)することを従業員に周知する

不意打ちで調査(モニタリング)をすることは許されません。事前に従業員に周知すると、証拠を隠滅する恐れがありますが、過去の違反行為に対して懲戒処分を行うことより、今後、職務に専念させることの方が重要と思います。就業規則に記載して周知する方法もあります。

また、パソコンの私的利用を禁止すること、その他、会社の設備や備品等は、会社の許可なく私的に利用することを禁止することを、改めて説明・周知するようにしてください。

2.パソコンの使用状況を調査(モニタリング)する必要性を整理して明確にする

一般的には、職務専念義務に反する行為を禁止する、会社の設備・備品等の私的利用を禁止する、機密情報や個人情報の漏洩を防止する、マルウェア(ウイルス等)の感染を予防する等が考えられます。パソコンの私的利用をしていない多数の従業員が納得できれば、協力を得られると思います。

3.調査(モニタリング)を実行する者を限定する

前項の必要性から明らかですが、関係のない者が興味本位で調査(モニタリング)をすることは許されません。必要性に基づいて、その権限がある管理監督者や担当部門の者等に限定されます。

4.就業規則にパソコンの私的利用を禁止する規定を設ける

罪刑法定主義という原則的な考え方があって、ある行為を犯罪として処罰するためには、あらかじめ犯罪行為の内容と処罰の内容・程度を明らかにする必要があります。

パソコンの私的利用を禁止することがルールになっていなければ、従業員が私的利用をしたとしても懲戒処分を行うことができません。就業規則の服務規律や懲戒の事由に該当する規定がない場合は、追加する必要があります。