休日に実施する健康診断の受診命令
休日に実施する健康診断の受診命令
定期健康診断を毎年実施していますが、休日に受診するよう指示しても良いでしょうか?
休日に定期健康診断を受診させること自体は違法ではありませんが、不都合が生じる可能性が高まりますので、健康診断は出勤日の所定労働時間内に行うべきです。
一般の定期健康診断は、業務と関連して実施するものではありませんので、受診に要した時間は「労働時間」とはみなされません。会社は、その時間に対する賃金を支払う義務はありません。
また、定期健康診断は出勤日(労働時間)に実施しなければならないというルールはありません。したがって、休日に定期健康診断を受診するよう従業員に指示・命令をすることは可能で、従業員が休日に受診したときは、会社は賃金(休日勤務手当)を支払う義務はありません。
労働安全衛生法(第66条第1項)によって、会社に対して健康診断を行うことを義務付けています。これには続きがあって、労働安全衛生法(第66条第5項)によって、「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」と規定されています。
つまり、定期健康診断の実施は会社の義務ですが、定期健康診断の受診は従業員の義務でもあります。
健康に対する意識が高い従業員は、休日でも健康診断を受診すると思います。しかし、そうでない従業員は、法律で受診が義務付けられているとしても、「休日はプライベートの時間だから、会社の指示・命令は受けない」と反発して、受診しない恐れがあります。
なお、健康診断の実施を怠った会社については、50万円以下の罰金が設定されていますが、従業員については、罰則が設定されていません。
年次有給休暇を取得して、出勤日に健康診断を受診するよう指示・命令をする場合も同じです。「年次有給休暇を消化されるのであれば受けたくない」という従業員の気持ちも分かります。
そして、万一、定期健康診断を受診していれば、症状を抑えられたような場合は、本人の意思で受診しなかったという落ち度から軽減されるとしても、会社に対して損害賠償を請求される可能性があります。
最近は、従業員の健康状態を把握する必要性が高まっています。できる限り、受診しない者を減らすために、定期健康診断は所定労働時間内に行って、賃金を減額しない(通常どおり支払う)取扱いが望ましいです。また、そうしている会社が大半です。
なお、有機溶剤を取り扱う業務など、特定の有害業務を行っている職場で義務付けられている特殊健康診断については、業務の一環として行うものですので、労働時間として賃金を支払う必要があります。
特殊健康診断については、休日に受診させたり、年次有給休暇を消化したりして、賃金を支払わない取扱いは違法になります。
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