健康診断の結果を理由とする採用の拒否(解雇)

健康診断の結果を理由とする採用の拒否(解雇)

雇入れ時の健康診断の結果に異常があった従業員について、採用を拒否しても良いですか?

健康診断の結果に異常があったことを理由にして、採用を拒否(解雇)することはできません。

労働安全衛生法(労働安全衛生規則)によって、従業員を雇い入れるときは、健康診断を実施することが義務付けられています。

入社して3ヶ月以内に健康診断を実施している会社が多いと思いますが、会社が採用を決定して入社日までの内定段階で健康診断を実施している会社もあります。

入社後の試用期間中に本採用を拒否する場合は、会社が一方的に労働契約を解約する行為ですので、解雇に当たります。

また、入社前の内定期間中に事情があって、会社が内定を取り消す場合も、一旦締結した労働契約を解約する行為ですので、法律的には同様に解雇に当たります。

そのため、労働契約法(第16条)の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」の規定が適用されます。

会社が本採用を拒否する場合、及び、内定を取り消す場合は、どちらも一般常識で考えて「仕方がない」と考えられるような理由が必要ということです。そのような理由がなければ解雇は無効で、本採用の拒否、及び、内定の取消しは認められません。

なお、内定期間中に実施した健康診断の結果に異常があったというだけで、業務にどの程度の支障が生じるのか分からない状況では、正当な解雇理由とは認められにくいです。

例えば、試用期間中に欠勤を繰り返して、出勤率が8割に満たない程度であれば、正当な解雇理由と認められる可能性が高いです。

予定していた業務を遂行できなければ、解雇は認められますが、実際に勤務しないと分からないケースが多いと思います。それを確認するために、試用期間があると考えられています。

労働契約を締結した後は以上のとおりですが、労働契約を締結する前(内定を通知する前)は考え方が異なります。

労働契約を締結する前に(採用選考の段階で)、健康診断を実施している会社がありますが、労働契約を締結する前であれば、解雇や内定の取消しの問題が生じることはありません。

しかし、厚生労働省によって、雇入時の健康診断は、入社後の適正配置や健康管理の基礎資料とするために実施するもので、採用の選考のために実施するものではないことが示されています。

採用選考の段階で健康診断を実施することは、法律で禁止されていませんが、就職差別ではないかと指摘される恐れがありますので、業務上の必要性がない会社は実施しない方が良いと思います。

業務上の必要性があって実施する場合は、事前に応募者に対して、業務上の必要性を具体的に説明して、本人から理解を得ることが望ましいです。

近年は個人情報が重視されていて、特に健康情報はデリケートで被害者意識を持たれることがありますので、十分な配慮が必要です。

ただし、欠勤の頻度によっては業務に支障が生じると思いますので、採用面接の際に、「病気を理由に会社(学校)を休んだことはありましたか?」「それは1年で何日ぐらいでしたか?」といった質問をすることは問題ありません。

また、既往症がある場合は、再発の可能性はあるか、残業できる体力はあるか、と確認をすることも可能です。もちろん、興味本位で聴くことは許されません。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。