退職時の年5日の年次有給休暇の取得義務

退職時の年5日の年次有給休暇の取得義務

退職を予定している従業員について、5日の年次有給休暇を取得していないと、労働基準法違反になりますか?

年度の途中で退職する場合は、5日に満たなくても労働基準法違反にはなりません。

労働基準法が改正されて、2019年4月以降は、1年に5日以上の年次有給休暇を取得することが義務付けられています。これに違反したときは、30万円以下の罰金が設定されています。従業員の義務ではなく、会社の義務です。

例えば、2025年4月1日に20日の年次有給休暇を付与した従業員が、2026年3月31日付で退職する場合は、丸1年在籍していますので、退職日までに5日以上の年次有給休暇を取得させる必要があります。

しかし、同じ従業員が、2025年9月30日で退職する場合は、付与日から1年未満ですので、退職日までに5日以上の年次有給休暇を取得していなくても問題はありません。在籍していたとすると、2025年10月1日以降に取得できる余地があります。

仮に、付与日から1年未満で退職する場合も5日以上の取得義務があるとすると、2025年4月1日付で自己都合退職することが不可能(=労働基準法違反)になります。また、5日以上の年次有給休暇を取得するまでは、会社は適法に解雇することができません。法律の構成として、そのような取扱いは考えにくいです。

労働基準法(第39条第7項)では、「使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の日数のうち5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。」と規定されています。

「6ヶ月勤務の場合は2.5日以上の付与義務がある」と月割りで案分するような規定は設けられていません。

言うまでもありませんが、従業員が退職日までの間に年次有給休暇の取得を請求したときは、事業の正常な運営を妨げる場合でない限り、会社は拒否できません。

また、例えば、2025年4月1日に20日の年次有給休暇を付与した従業員が、2025年10月1日から私傷病によって休職期間を開始した場合も考え方は同じです。

年次有給休暇は出勤日の勤務を免除して賃金を支払うという制度ですので、出勤日でないと取得できません。休職期間も同様に、出勤日の勤務を免除して解雇を猶予するという制度です。先に休職期間として有効に成立した日(期間)については、年次有給休暇を取得できません。

2026年3月31日までに復職できない場合は、実質的に年次有給休暇を取得できませんので、年5日の年次有給休暇を取得していなくても、労働基準法違反と指摘されることはありません。

しかし、2026年3月31日まで5日以上の所定労働日を残して復職したときは、5日以上の年次有給休暇を取得・消化させる必要があります。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。