妊娠・出産・育児による退職と失業給付の受給

妊娠・出産・育児による退職と失業給付の受給

女性従業員が「妊娠したので退職したい」と言ってきました。入社して8ヶ月ですが、雇用保険の失業給付は支給されますか?

受給期間延長措置を受ければ、勤続年数が1年未満でも、雇用保険の失業給付を受給できる場合があります。

雇用保険の失業給付(基本手当)は、原則として、離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あることが条件になっています。そのため、通常は最低でも1年以上在籍していないと、雇用保険の失業給付は受給できません。

ただし、解雇や倒産によって離職して、「特定受給資格者」に該当する場合は、離職前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あることが条件になって、通常の場合より支給要件が緩和されます。

自己都合で退職する場合は、会社において法令違反に相当するような特別な事情(賃金の不払い、過重労働、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等)があれば、特定受給資格者に該当します。

会社にそのような法令違反がなくても、個人に保護するべき事情があって、自己都合で退職する場合は、「特定理由離職者」に該当します。その場合は、特定受給資格者と同様に支給要件が緩和されて、離職前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば、雇用保険の失業給付を受給できます。

そして、特定理由離職者に該当する者として、「妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者」が挙げられています。妊娠しただけでは不十分で、受給期間延長措置を受けることが条件になっています。

雇用保険の失業給付は、労働の意思及び能力がある場合に支給されます。

妊娠・出産・育児のため、職業に就けない期間は、失業給付は支給されません。そのような場合に、受給期間延長措置として、職業に就ける状態になった後に、職業に就けなかった期間をスライドする方法があります。これによって、最長4年まで受給期間を延長できます。

受給期間延長の申請はハローワークに、妊娠や出産等の理由によって、引き続き30日以上職業に就くことができなくなってから、早期に行うこととされています。申請が遅くなると、基本手当(失業給付)の所定給付日数の全てを受給できない可能性があります。

また、受給期間延長措置の申請をする際は、母子健康手帳等の添付を求められますので、従業員には申請をする前に、ハローワークに電話をして確認するよう伝えてください。申請書の提出は郵送でも可能です。

妊娠・出産・育児以外で保護するべき事情があって、自己都合で退職する場合に、特定理由離職者と認められるケースがあります。詳しくは、こちらのページで確認してください。

また、前の会社で雇用保険に加入していて、離職後に失業給付を受給しなかった場合は、前の会社の離職票を通算できますので、特定理由離職者に該当しなくても、失業給付を受給できる場合があります。