離職票の離職理由の変更

離職票の離職理由の変更

自己都合で退職する従業員が、「雇用保険の失業給付を早くもらいたいので、離職票の離職理由を解雇にして欲しい」と会社に言ってきました。解雇で届け出ても良いですか?

事実のとおり、自己都合による退職で届け出てください。

雇用保険の失業給付を受給する場合に、離職理由が解雇か自己都合退職か、どちらに該当するかによって、取扱いが異なります。

  1. 自己都合退職の場合は、1ヶ月の給付制限期間(2025年4月以降)がありますが、解雇の場合は、給付制限期間がなく直ぐに失業給付を受給できます。
  2. 自己都合退職の場合は、1年以上雇用保険に加入している必要がありますが、解雇されて特定受給資格者に該当する場合は、6ヶ月以上雇用保険に加入していれば失業給付を受給できます。
  3. 自己都合退職の場合の失業給付(基本手当の所定給付日数)は、加入期間が20年以上で最大150日分が支給されますが、解雇されて特定受給資格者に該当する場合は、最大330日分が支給されます。

従業員にとっては、自己都合退職より解雇の方が優遇されています。自己都合退職は本人の意思で行いますので、退職後の準備ができますが、解雇の場合は通常は準備ができませんので、手厚くなっています。また、安易な自己都合退職を助長しないようにという考えもあります。

このような違いを知っている従業員が、解雇扱いにして欲しいと言ってくる場合があります。会社がこれに応じて、離職票の離職理由を会社都合の「解雇」で届け出ると、大きなリスクがあります。

本人は安易に考えているかもしれませんが、このような行為は不正受給となって、会社は詐欺罪の共犯者になってしまいます。

また、解雇の実績があると、受給できない助成金があります。受給要件は助成金の種類によって異なりますが、採用関係の助成金は、「解雇の実績がないこと」が条件になっているものが多いです。

更に、後になって本人から「不当解雇だ」と訴えられる可能性がゼロではありません。当然ですが、正当な解雇理由はありませんので、非常に面倒なことになります。

解雇予告手当(平均賃金の30日分)の支払いを求められて、その上、解雇日以降の賃金の支払いを求められることも考えられます。不当解雇と認められると、それまでの賃金を支払わないといけません。

従業員も最初はそんなことを考えていないと思いますが、(そのような事情を知らない)ハローワーク等からアドバイスを受けて、労働基準監督署に申告するかもしれません。

以上のとおり、事実と異なる記載はしてはいけません。離職票には、必ず、事実を記載してください。言うまでもありませんが、解雇したときは、解雇で届け出る必要があります。