中国電力事件

中国電力事件 事件の経緯

電力会社に勤務をする従業員が、労働組合活動の一環として、勤務時間外に社外で、会社が計画している原子力発電所の建設を批判するビラを配布しました。

会社はビラの内容が虚偽であり、就業規則の懲戒事由の「会社の体面をけがした者」、「故意又は重過失によって会社に不利益を及ぼした者」に該当するとして、ビラを配布した従業員を懲戒処分しました。

ビラを配布した従業員は複数いて、懲戒処分の内容は、2ヶ月の休職(出勤停止)が1名、1ヶ月の休職(出勤停止)が3名、半日分の減給が3名でした。

これに対して従業員が、懲戒処分の無効を求めて、会社を提訴しました。

中国電力事件 判決の概要

従業員が配布したビラの内容が、事実に反していたり、事実を誇張・わい曲していたりして、その配布により企業の円滑な運営に支障を来す恐れがある場合は、会社は企業秩序を維持・確保するために、ビラの配布行為を理由として、従業員を懲戒処分することが許される。

ビラの配布行為は、就業規則に定める懲戒事由の「会社の体面をけがした者」及び「故意又は重過失によって会社に不利益を及ぼした者」に該当する行為で、会社は懲戒処分をすることができる。

会社が行った懲戒処分は、従業員の表現の自由を不当に侵害するものとは言えない。また、従業員の思想や信条を規制するものではないから、公序良俗に反するものではない。

中国電力事件 解説

従業員は、会社と労働契約を締結することによって、労務を提供する義務を負うと共に、企業秩序を遵守する義務も負います。

会社は、円滑な企業運営を図るために、企業秩序を維持・確保する必要がありますので、企業秩序に違反する従業員を懲戒処分することが許されます。

従業員の行為によって、円滑な企業運営を阻害する恐れがある場合は、勤務時間外に社外で行った行為であったとしても、就業規則が適用されて懲戒処分の対象になります。

この裁判では、ビラの内容は大部分が虚偽で、正当な組合活動から逸脱していると判断されました。

仮に、ビラの内容が虚偽でなければ、正当な組合活動と判断されて、ビラの配布によって、会社の社会的信用が低下したり、不利益を受けたりしても、会社は受け入れなければならない(懲戒処分は無効になる)と考えられます。

【関連する裁判例】