関西電力事件

関西電力事件 事件の経緯

従業員が、勤務時間外に会社を誹謗中傷するビラを社宅に約350枚配布しました。

会社の就業規則には懲戒事由の1つとして、「その他特に不都合な行為があったとき」という規定が設けられていました。

従業員の行為はこれに該当すると判断し、会社は就業規則に定めている6種類の懲戒処分のうち、最も軽い譴責処分を科しました。

これに対して従業員は、会社が行った懲戒処分は権利を濫用したものであると主張して、懲戒処分の無効を求めて、会社を提訴しました。

関西電力事件 判決の概要

従業員は、労働契約を締結して雇用されることによって、会社に対して労務を提供する義務を負うと共に、企業秩序を遵守する義務を負う。

会社は円滑な運営を図るために、企業秩序に違反した従業員に対して、一種の制裁罰である懲戒処分を行うことができる。

企業秩序は通常、職場内での行為を規制して維持するものであるが、職場外での職務遂行に関係のない行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来す場合がある。

会社は企業秩序を維持・確保するために、そのような行為も規制の対象とし、これを理由として従業員に懲戒処分を科すことが許される。

このような場合を除いて(企業の円滑な運営に支障を来すものでなければ)、職場外での職務遂行に関係のない従業員の行為については、会社が規制することは許されない。

これを本件に当てはめると、ビラの内容の大部分が事実ではなく、又は事実を誇張・歪曲し、会社を非難攻撃、中傷誹謗するものであった。このようなビラを配布することによって、会社に対する不信感を醸成し、企業秩序を乱す恐れがあった。

従業員によるビラの配布は、勤務時間外に職場外の社宅において、職務遂行に関係なく行われたものであるが、就業規則の懲戒事由に該当すると考えられる。

したがって、これを理由として従業員に譴責処分(懲戒処分)を科したことは、会社の裁量権の範囲内で許されるものである。

関西電力事件 解説

職場内の秩序が乱れると、指揮命令関係がぎくしゃくして、円滑な企業運営に支障が生じます。

そのため、企業秩序に違反したことを理由として、会社は従業員に対して、懲戒処分を行うことが許されています。会社は懲戒を行う権利があるのですが、権利を濫用したときは、懲戒は無効になります。労働契約法第15条で、そのことが規定されています

そして、この裁判例は、会社を誹議中傷するビラを社宅に配布したことを理由として、つまり、勤務時間外に職場外で行われた行為を理由として、会社が行った懲戒処分(譴責処分)が有効かどうか争われたものです。

勤務時間外に職場外でどのように過ごすかは、従業員の自由です。原則的には、会社が従業員の行動を規制することはできません。しかし、勤務時間外の職場外の行為であったとしても、企業秩序を乱す恐れがある場合は、従業員に懲戒処分を科すことが許されることが示されました。

このケースでは、従業員が配布したビラの内容は、大部分が事実ではなく、事実を誇張・歪曲するものでした。そして、ビラの配布によって、企業秩序を乱す恐れがあったことから、就業規則で定められている懲戒事由に該当し、会社が行った譴責処分は有効と判断しました。

ただし、会社に懲戒処分を行う権利があるとしても、違反行為の程度と懲戒処分の重さが釣り合っている必要があります。

従業員が行った違反行為に対して、懲戒処分が重過ぎると、労働契約法第15条によって権利を濫用したものと判断されて、懲戒処分は無効になります。したがって、懲戒処分はそれぞれのケースごとに慎重に検討して、決定するべきです。

この裁判でも、もし、ビラの内容が事実だったとすると、企業秩序に与える影響も違うはずですし、労働者保護が考慮されて、違った結果になっていた可能性もあります。